【第9話】

初めての街ノアニール


孤児院を出て、途中少し休憩を挟んだが、

ほぼ丸一日歩き通しで念願のノアニールが見えてきた。

俺たちは、初めて見る街を早く見たくて駆け出した。




「ここが街かぁ・・・」


「すごいねぇ・・・・」


孤児院と仕事場の鍛冶屋しか見たことがなかった

俺たちには初めて見る街がすごく新鮮だった。


街についたのが夕方というのもあって

人の数はそれほど見られなかったが

それでもにぎわっていた。


そして何より違うのが人々の顔が活気付いていることだった。

孤児院での生活は目が死んでいた大人がいつも俺たちを見ていた。


そんな生活がイヤだった俺は今までに

孤児院では感じたことがなかったものを

街の人々から感じた。


「・・・・なんかいいな」


「うん・・・・・・なんかいいね」


”なんか”が何であるかがわからなかったが、

俺達はこの街が一目で気に入った。


街に入った俺たちは、まず川を探して

そこで素っ裸になって体をあらった。


「ふえぇ・・・気持ちいい・・・」


街中に入ろうとしたら、リュックが

俺たちの身なりをどうにかしたほうがいいと言ったからだった。

確かに俺たちの服装はぼろぼろで、

汗と魔物との戦いで汚物がついていて変なにおいがしていた。

といっても着替えなんかも持っているわけもなく、 無一文の俺達は

せめて体と服だけでも洗ったほうがいいということで、

俺たちは川を見つけそこで体と服を洗った。


当然素っ裸では寒いから孤児院で持ってきた毛布で

身をつつむ。


「今日はここで野宿だな・・・」


「そうだね・・・・」


俺たちが川から出たときは

もう夜になっていていた。

でもここなら魔物に襲われる心配もないし、

安心して寝られる。


俺達は火をおこし服を乾かし

落ちていた汚い金属の器を拾ってきて

川の水で洗いそこに水を入れて芋を煮た。


何の味付けもなかったが

芋の甘い汁がにじみ出てきてうまかった。

初めて自分達で得た自由はこのときだった。



第1部:カンダタ幼少時代編を書いてみました。

チェルト本編のメルキド対戦でカンダタが

勇者チェルトを守り、活躍するところあたりで

カンダタのストーリーを書いてみたいなと思ったのがきっかけでした。


チェルトの場合は、父親がいなかったものの

母親の愛情に包まれて、たくさんの友達もいて幸せに過ごしていました。


しかしカンダタの場合は、まったく恵まれなかった境遇で過ごしていて

毎日生きるためだけに働く毎日で

生きていくための知恵(盗み)をすることで

飢えをしのいだりしていたり、汚い身なりで過ごしてなど

当時の貧しさや、生活の貧困さが文章でうまく出ていればなと思います。


孤児院を抜け出したい、

でも行動を起こせないカンダタ(ルーニ)

そこへカンダタのことを慕う同い年の孤児リュックと一緒に

孤児院を出ましたが

リュックの勇気のなさに、カンダタが言葉は乱暴ながらも

孤児院を抜け出したときの勇気を思い出せと

カンダタなりに勇気づけるシーンとか自分で書いていて結構好きでした。


幼少時代のカンダタのお話、いかがだったでしょうか。


さて第2部は、カンダタ達が子供から少年になったときのお話です。

幼少時代、カンダタはルーニと孤児院の仲間から呼ばれ、

ルーニという名前でこれが本名かどうかも本人は知らないのですが、

後に「カンダタ」と名乗るのは何故かというストーリーで

ゲームの方でも描かれている、ロマリアにある金の冠

盗もうとしたお話にもあたります。


第10話 破格の仕事

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