【第97話】 似たもの同士
雷神の剣がどれだけすごいかは知らないが、
やはり親方一人でイシスにいかせるのは不安だった。
またゼネテスも親方の話を断り、イシスに同行をすることを申し出たようだ。
「まったく、そんなところまで、似おって・・・」
「俺とゼネテスが? 似てねぇよ」
俺はゼネテスと似ていると言われたことがなんだか癪だったので、反論した。
「いや、似とる。 おまえは知らんだろうが、ゼネテスはおまえと同じ 親もおらず、盗みで日々の暮らしをしておった」
「そのくらいなら、他にもいっぱいいるよ」
「ワシがとある事件でゼネテスをつかまえ、 ロマリアの正規兵としてロマリア王に願い出た。
そのあと、闘技大会で優勝する腕前まで成長したあと、 このシャンパーニの塔に来たんじゃ」
「そりゃ・・・経歴は俺と同じかもしれねぇけれどよぉ・・・」
「しかも、久々に会ったら、ワシと対決をさせろと言いおった。 これのどこが似てないんじゃ?」
「・・・」
反論できなかった。ゼネテスは俺が歩んだ形跡をそのまま歩んできていた男だったのだ。
もしかして、ゼネテスを見ていらだったのは、いつも冷静かつ、余裕な態度である一方、自分に似ているところがあり、自分を見ているようなところがイヤであったのかもしれない。
「あぁ、うるせえな、ゼネテスは関係ねぇよ。 とにかく俺はついていく」
「その左肩でか?」
左肩にはシャンパーニに戻ったあと、新しい包帯につけかえ、ぐるぐる巻きにした。
だいぶ骨はくっついてきた気がするが動かせば激痛がはしる。
「大丈夫だ。もう直りかけている」
俺は嘘を言い、左肩を動かした。肩に痛みがはしるが、顔には出さない。
「顔がこわばっておるぞ」
しかし親方には微妙な表情を読み取った。
「大丈夫だって!」
「今回の戦い、人を守る余裕はない。 そんな左肩でいっても足手まといじゃ」
「・・・」
守ってもらうつもりは毛頭ないが足手まといなのは事実だ。俺はこれ以上言い返せなかった。
俺はうつむいた。
「・・・ふぅ」
親方がため息を着つく。
「カサーブに知りあいの神官がおる。 金はかかるが癒しの魔法が使える。 そこによっていくぞ。 出発は明日。支度をすませておけ」
「ありがてぇ!」
第98話 親方の演説
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