第1話 序章
-アレはいつのことだっただろう‐
‐私がミストの村から外に出る事を願っていたから‐
‐セシルと会う、1~2年くらい前になるのかな‐
‐お母さんに騎士の種類を教えて貰った事がある‐
‐そう、今となっては楽しかった時のひとかけら-
「お母さん!!」
私はいつものように外から帰ると、すぐにお母さんの元に向かった。
「お帰りなさい、リディア。今日はどこに行っていたのかしら?」
お母さんはいつも笑って迎えてくれる。
「あのね、あのね。村の入り口にいたの!!旅の人とか来ないかな~って。
私村から出た事がないから、旅の人が来たら色々聞きたいなって思って。」
「あら、それは残念だったわね。」
「どうして?」
「今日は旅人さん、来なかったでしょ?」
「え、すごい!どうして知ってるの?
お母さん、今日は一日外には出てないよね?」
「ふふ、お母さんは何でも知ってるのよ」
お母さんは本当に物知りだ。
聞けばどんな事でも教えてくれる。
「ねぇ、お母さん。私いつになったら村の外に出られるの?」
でも、この質問だけはいつもごまかされちゃう…。
「う~ん、リディアはミストは嫌い?」
「ううん、そんな事ないよ!でも、外でいろんなものも見てみたい…。」
ミストの村は大好きだ。
村のみんなも優しいし、自然に囲まれているのも好き。
でも、私は村から一歩も出させてもらえない…。
村のみんなが外の国……カイポやバロン、
時にはミシディアみたいな遠いところに行った人から
お土産をもらう度に、私も外に出てみたいと思う。
「でも、外には怖いモンスターが沢山いるのよ?」
「私も大人になって一人前の召喚士になったら外に出てもいいの?」
確かに私はまだまだ一人前の償還士には程遠い…。
やっとチョコボとお話出来るようになったばかりだ。
でも、お母さんはそれだけじゃないと続けた。
「たしかに、一人前の召喚士になるのは必要だけど……そうね、もう一つ条件があるわね。」
「え?そうなの?他にどんな事がいるの?」
するとお母さんは優しく教えてくれた。
「いーい、リディア。召喚士は確かに強い力を持っているけど万能じゃないのよ?
強い力を持った召喚獣を呼ぼうとしたら準備にたくさん時間がかかるのよ。
召喚士はね、旅をするならその時間の間守ってくれる仲間が必要なのよ」
「え?じゃあお母さんでも一人じゃ外には出られないの?」
お母さんはゆっくり頷く。
すごく驚いた。
お母さんは歴代のミストの村の召喚術士でも一番の実力者だって言われている。
ミストの歴代の守りのドラゴンに認められている術者だって言うだけじゃなく、
召喚を長時間維持する事が出来る。
召喚魔法は、周囲に歪みが生じるから一瞬しか呼べないのが普通なのに、
その歪みを魔力の調節で抑えているんだって………私にはよくわからないんだけど。
「でもでも、お母さんと一緒になら外にも出られるんだよね?
他の人と一緒にいれば外に出てもだいじょうぶって事でしょ?」
「私じゃだめなのよ。私も魔法しか使えないから。
魔法を使わない、騎士みたいな人が必要なのよ。」
「騎士って剣とか槍で戦う人の事だよね?」
「そうね、それじゃあ今日は、いろいろな騎士についてのお話をしましょうか。」
こうして、お母さんによる騎士講座が始まった…。