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【16、戦友】

 ルゲイエの機械の手に握られた鍵を手にしていたセシル達は、塔の最上階まで行こうとしたが、別ルートを通らなければならないことに気づいた。それにルゲイエの言っていたことも気になる。
「あのマッドサイエンティストの奴、ドワーフの城を攻撃するとかなんとか言ってなかったか?」
「そう言えば、5階に鍵のかかった部屋があったな。」
「セシル、その鍵もしかしたら・・?」
「急ごう!!」
 セシル達は、5階に戻ることにした。
                    ☆
 その鍵のかかった部屋にはなんと巨大な砲台があった。そこには白衣を着たゴブリンキャップが数名いて、ドワーフの城の爆破をたくらんでいる様子だった。
「よし、ここからドワーフの城をねらえば・・。」
「ヒッヒッヒ!奴らの城は木っ端微塵だ!!」
 しかし彼らは、予期せぬ侵入者に気づき、計画を中断した。
「き、貴様らどこから入ってきやがった?」
「どうでもいい、やっちまえ!!」
 セシル達にとってゴブリンキャップなどザコ以外の何者でもなかった。問題はそのあとだった。ボコボコにやられたゴブリンキャップの1人が、ボタンを押してしまったのだった。そのボタンは、起爆装置のボタンでしかもそれはドワーフの城に向けられている。
「どうしよう!このままでは・・。」
 セシル達が慌てふためいていると、ヤンは何を思ったのか、4人を外へと締め出した。
おまけに、ヤンはいつのまにかセシルから鍵を取り上げていて、内側から鍵をかけていたのだった。
「ヤン、どうして?!」
「ここの砲台は私が何とかする!!セシル殿4人は早く安全な場所へ!!」
 セシルは何とか扉をこじ開けようとしたが、意外に頑丈でびくともしない。
「開けるんだ、ヤン!!」
「妻に伝えてくれ・・・私の分も生きろと!!」
 ヤンの声がはっきりと聞こえる。
「嫌、やめて!!」
「開けろ、ヤン!」
「お願い、馬鹿なマネはしないで!」
 リディア、カイン、ローザも扉を必死で叩く。だが、ヤンは開けようとはしなかった。
「楽しい旅であった。」
 ヤンのその言葉と共に爆音が聞こえた。リディアはそれでも部屋に入ろうとしたが、セシル達は彼の気持ちを無駄にすることはできず、引き返すことにした。セシルはリディアを無理に抱え込んでドアから引き離す。部屋からは激しい爆音が聞こえてきた。
「ヤン・・。」
 セシル達4人は目に涙を浮かべながら引き返すことにした。ヤンはおそらく助かるまい。しかし彼が死んだと信じたくない彼らは、それっきりヤンについて話そうとはしなかった。
                    ☆
 彼らが一階までやって来た時、タイミングの悪いことにゴルベーザがやってきた。何十匹ものモンスターを引き連れていたのでとても対戦できるような状況ではない。4人とも橋の所から落とされてしまう。
「このまま地獄の底まで落ちるがいい!」
 ゴルベーザの高笑いがセシル達の耳に響き渡る。しかし、さいわいにもセシル達は落下を免れた。シドがセシル達を迎えに、エンタープライズ号で駆けつけてきてくれたのである。
「シド、ありがとう!!」
 セシル達は喜んでいたが、ほっとしている暇などなかった。
「のんびりしている暇などない!!全速力で逃げねば!!」
 シドが言うように赤い翼が、すぐ後ろを追いかけてきている。彼らは地下世界の入り口の大穴の所まで逃げたが、とても引き離せない。
「しょうがない。俺がおとりになって穴をふさぐ!お前たちはその間に逃げろ!!」
「えっ?おとりに・・?!」
「どうやって穴をふさぐのだ?」
 皆、シドがどうやってこの危機を乗り切るのか考えている時間などなかった。シドはありったけのダイナマイトを抱え込み、パラシュートで落下する。
「お前らはバロンに行け!俺の弟子が何とかしてくれるだろう!!」
「おじいちゃん、やめて!!」
 リディアがシドの身を案じて叫ぶ。シドはまだかっこつけていた。
「俺はまだ若い!せめておじちゃんと呼べ!!」
 少し下のほうで爆音と共にシドの声が聞こえた。泣き叫ぶリディアを、ローザは涙を流しながらも優しく肩を抱く。セシルとカインはむしろ怒っていた。
「ニコラに何て言えば・・?!」
「全くヤンといいシドといい、死に急ぎやがって!!」
 彼らとて本当はリディアと同じように泣きたかった。しかし彼らは素直に悲しみを口にするにはショックが大きすぎたのである。それに哀しんで立ち止まっている時間は彼らにはないのだ。
「ヤンにしても、シドにしても簡単に死ぬような人間じゃない。彼らの生命力を信じてやろう。」
 セシルは、皆が悲しみのあまり戦意を失わないように願って、むなしくそう言った。皆セシルの気持ちを察してうなずき、次の目的地へと向かった。

第17話 「幼な友達」
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