Peppermint Breezeに行きます! Pastel Midilinに行きます!
リンクについてはこちら♪
リディア同盟とは リディアイラスト リディア小説
リディア会員名簿 掲示板
リンク
 
 

 
FINAL FANTASYⅣ-恋い焦がれる異国の王-<第ニ話>


「・・・これが『炎』の魔法の原理です。」
美しいエメラルドの髪をした少女が様々な老若男女を前に、魔法 に関する弁論をしている。
彼女こそが異国の地エブラーナ国の王が恋い焦がれる召喚士の 娘リディアである。
彼女はここ召喚士の村ミストで、魔道士を目指す人々に魔術を教 え、学ばせている。召喚魔法は一族伝来の魔法が故、修得させる のは不可能だが、黒魔法・白魔法は魔道士を目指すなら誰でも修 得可能のため、それらを学ばせている。
当然、魔法を修得するのなら『魔術の生まれし場所』をいわれるミ シディアで学べばよいのだが、世界一の魔道士と誉れ高い者の講 習を是非受けたいという者が多く、世を救った英雄から学べば魔 道士の力が早く身に付くと思った者も少なくない。
他にもただ、美しい女性魔道士を見るだけのためにこの場にいる 、ふしだらな者さえいた。
リディア自身としては、魔術の普及していないこの地方に魔法を教 え、豊かにしようと思ったために始めたつもりなのだが。
「けっ、こんな基礎中の基礎の講習なんて、天才魔道士パロム様 には必要ねーよ。」
不意に彼女の講習を受けつつ、悪態をこぼす少年がいた。歳はま だ五歳。
「シッ!リディア姉様に怒られるわよ!」
隣にいた、同じ歳の少女が悪態ずく少年に叱咤する。
少女の名はポロム。パロムとは双子の姉弟であり、少々ませた性 格の姉である。
また、この二人は魔道士の国ミシディア出身の魔道士で、幼いな がらも強力な魔法を行使できる優秀な魔道士であった。
今回は研修生としてしばし、リディアの元で魔法を学ぶこととなっ ていた。その才能を更に開花させようとするミシディア長老の意向 である。
「へっ、あんなオンナに嘗められちゃパロム様もお終いだぜ?長老 の方がおっかねえよ。」
余裕の表情を見せつけつつ、パロムは更に悪態続ける。
それを聞いたポロムはそれを制する言葉を投げかけようとしたが、 あることに気づき沈黙した。
「どうしたんだ、ポロム?」
姉の異変に気付いたパロムが、疑問の声を投げかけたが、パロ ムもその意図をすぐさま感じ取り、ゆっくりと視線を目の前で講師し ているはずの魔道士に目をやろうとする。
「げっ!」
その魔道士は自分の目の前に居た。パロムは机に足をかけ、椅 子を傾けた姿勢を取っていたため、驚きと共に倒れそうになる。
「なにが『げっ!』ですか。罰として目の前の問題を解く!出来なけ れば居残りで魔道書の書き取り!」
リディアは毅然とした態度をとりつつも、密かに目の奥では笑って いるように見えた。まるで悪戯をするかのような目である。
パロムはここ一週間、リディアと一緒にいたため彼女の性格は何 となく理解していた。
なにか、嫌な予感がする。
パロムは正直にそう思った。目の前の問題を解いたら帳消し?そ のような生ぬるいことは無いと断言できる。
パロムは不承不承椅子から立ち上がり、目の前の黒板まで歩き、 問題に目をやる。
(なになに、次の魔法の詠唱呪文を述べよ?)
問題を見て、パロムは安堵の息を一つ付く。いつも罰としてミシデ ィアではよく魔道書の書き取りをしていたのでこれは得意中の得意 であったのだ。
どうやら、自分の思い過ごしだったとパロムは考えを改める。そし て、心改めたパロムは再び黒板に視線を戻し、更に問題を読む。
(楽勝楽勝!っで魔法名は・・・ケアル、レイズ、ホーリー??)
(なんで、白魔法?おいら、黒魔道士だから白魔法の詠唱呪文な んてこれっぽっちも知らねーよ!!)
問題文を見て安堵していた分、その反動は大きく、激しく動揺し、 何とか呪文を思い浮かべようとする。白魔法の講習も受けていた ので、多少なら思い出せるはずと踏んで。
(ケアルは・・・アテル(癒しの)・・ヴァン(精霊)・・・だっけ?)
必死に思い浮かべて、呪文を黒板に書こうとするがそこで記憶の 糸が途絶える。やはり、しっかりと学んでいない呪文なぞ思い出せ るはずはなかった。
「分かりません・・・。」
流石にこれ以上は無理と判断したパロムは白旗をリディアに向け て振る。長老よりも怖いかも知れないと、つくづく思い知らされたの だった。
「じゃ、呪文の書き取りね。これからは授業中の私語は慎むように !」
微笑みをこぼしつつも、リディアが罰を言い渡し、また注意も添え た。
「はい。」パロムは肩を落とし、つつそう素直にリディアに答えるの であった。
そして最後の授業も終え、リディアがそのパロムに分厚い魔道書 を一冊手渡す。書き取り用としての魔道書である。しかも、パロム の苦手な白魔法に関する魔道書。
「げ~、白魔法はおいら苦手ということ知ってこれを出すのかよ。」
うんざりとした表情で、手にある魔道書を眺めながらパロムは文句 を言う。
「パロムは賢者テラさんを目指しているんでしょ?テラさんは黒魔 法、白魔法を極めた偉大な魔道士。白魔法修得は避けて通れな い道じゃないかしら?」
喉の奥で笑いつつ、リディアはそう諭す。
「ちっ、足下みやがって・・、これだからオトナは嫌なんだよ。」
相変わらず口の減らない口調でパロムは呟くが、それを聞いたリ ディアが「一冊じゃ足りなかった?」とにこやかに言うと、流石にパ ロムは口をつむぐしかなかった。
「さて・・・っと。私もその間勉強していようかしら。」
書き取りを始めたパロムを見て、リディアはそう言い魔道書を一冊 取り出し、パロムの隣に座る。
「リディアが勉強?その魔道書は?」
書き取りをしつつ、パロムは聞く。
「私も勉強はするわ、そして魔道書はパロムと同じ白魔法の魔道 書。」
パロムはその言葉を聞いて、納得する。リディアは幻獣界で急速 に己を高めた代償として白魔法を失ってしまったが、世が平和に なって余裕が出始め、それから失われた白魔法を再び体得し始め たと聞いていたために。
「あとアレイズ、ケアルガ、ホーリー、だったよな?」
パロムが記憶を辿りつつ、確認を取る。
「ええ、そうよ。だけど、これぐらいの高等魔法となると精神力の魔 法転化が今までとは異なるのよ・・。」
なかなか修得できない魔法に少々困惑の表情を見せながらリディ アは言う。
魔法は初級魔法ぐらいなら、ほぼ誰でも修得可能なのだが、高等 魔法はある意味素質も関わってくる。そのため、最悪な場合修得 不可能な魔法も存在する。
故にテラなどの『賢者』は、極めて希な存在であり、偉大な存在と されている。
リディアは先程の三魔法以外の魔法は難なく修得できたのだが、 その三魔法だけはどうも勝手が異なるみたいでなかなか修得でき ないでいた。
文章よりも、その魔法を行使できる実際の人物にマナの練り方な どを教わるのが一番修得しやすいのを知っているため、ローザに 教わったのだが、やはり修得できないでいた。
しかし、諦めるわけにはいかないのだ。白魔道士を目指している 者がいるし、素質あれば高等魔法さえも修得できる者さえいるは ずだ。その時、自分が何も教えて上げることが出来ないとなると、 これ程惨めなものはないと思う。
(でも、修得できない理由は何となく理解しているのよね・・。)
リディアはポツリと心の中で呟く。実はローザとの謁見で魔法修得 が出来ない原因は密かに分かっているのだ。
(高等魔法の行使には、強力な精神統一が必要とする。悩み無い 強靱な心が聖なる高等魔法の修得に欠かせない-か。)
ローザに言われた言葉を思い出す。
(実は有るんだよね、悩み。しかも、簡単に伏せることが出来ない し、克服するのも分からない悩みが・・。)
まさに、背に手が届かないようなもどかしさを覚える、魔法修得不 可の理由があるのだ。
(・・・あのバカ。)
悩みの種である、その人物に心の奥でリディアは文句をつく。
「・・ディア、リディア!!」
その時、思い耽っているリディアに、何度も呼びかける声が意識を 心の奥から引っぱり出した。
「えっ、何?」
その声で我に返ったリディアが、動揺しつつも声の主であるパロム を見やる。
「何ぼんやりしてんだ?客だぜ。」
怪訝な表情を見せながら、パロムは顎でその人物のいる所を示し た。
そこには身成良い、老人が微笑みをこぼしながら立っていた。また 、服装は身成良いといっても、どことなく異国の者を感じさせる出 で立ちであった。
無論、リディアはこの人物を知っていた。先程心の中でぼやいてい た人物の家臣である。名は確か『テシン』といったはずだ。
「お久しぶりです、テシンさん。」
リディアは椅子から立ち上がり、テシンの元まで歩み軽く頭を下げ る。
「こちらこそお久しゅうございます。リディア殿。」
テシンもまた、頭を下げつつリディアに答える。
「御用は・・・って、大体分かりますけどね。」
リディアは苦笑いしつつ言う。テシンが近い日にここに訪れるのも 大体予想していたので、テシンの突然の訪問にも驚きはしなかっ た。
「はぁ、そのことなんですが・・。ここでは・・。」
テシンが額の汗を手拭いで拭き取りながら、パロムの方を横目で 見やった。
「そうですね、では私の自宅でお伺いしましょうか。」
テシンの言葉の意図を解釈し、リディアが提案する。
「かたじけない。」
リディアの心配りに安堵を覚えながらテシンは礼の言葉を述べた。
しかしその時、事の運びに耳をすませながら、心の中でほくそ笑ん でいる者がいた。
(よし、いいぞ。このままリディアが居なくなったら、即『デジョン』で 逃げだ・・。)
パロムである。彼は口元にも笑みをこぼしながら魔道書の書き取 りをしていた。
「じゃあ、そういうことだから私は家に帰るからね。」
テシンとの話がまとまったリディアが、書き取りをしているパロムに 言った。
「ああ、分かった。」
真面目に書き取りをしている振りをしながら、パロムは答える。胸 中としては早くこの場を去ってくれと懇願して。
「サボるんじゃないわよ?」
リディアがパロムの耳元まで顔を近づけ、囁くように言う。だが、静 かな口調なものの、凄みを帯びた言葉であった。
「わ、分かったって。」
多少、声を上澄みつつもパロムは返答する。一応、動揺を見せな いようにしているつもりだ。
「怪しいけど、そう言ってる場合じゃないから・・。テシンさん行きま しょうか?」
パロムの不審さを感じつつも、リディアは納得しテシンに伺いを立 てた。また、テシンもリディアの言葉を承諾する旨を伝えた。
「じゃあ、行きましょう。」
リディアはテシンの了解を得ると締めくくるかのように言い、テシン と共にその場から出た。
パロムも横目で二人の退出を確認すると、背伸びをして大きな欠 伸をする。どうやら、事無く済んだようだ。
「や~っと行ったか。では早速、脱出魔法を・・・。」
当初の予定通り、パロムは『デジョン』の魔法を詠唱し始める。
「次元を斬り裂く、魔の剣よ・・・。」
「あら、魔法詠唱して何するつもりかしら?」
突然、ここにいるはずのない人物の声が背から聞こえた。パロム は一瞬心臓が飛び出るかのように肩をビクッとさせて、魔法を中断 し、ゆっくりと声のした方を振り返る。まるで、音を立てたら即食い つかれるような魔物が後ろにいるかのように。
やはり、いた。考えたくはなかったが居てほしくない人物がそこに いた。分かっているが、その姿を実際に見ると、更に冷たい汗が 背に流れるのだった。
勿論、その人物とはリディアをおいて他ならなかった。どうやら、彼 女も瞬間魔法でここに移動したようだ。
「な、な、何って・・・ほら?魔法の練習だよ・・・練習。書き取りして たら使えそうだったからさ・・・ハハハ。」
しどろもどろに弁解するパロムだが、その慌てぶりから説得力に欠 けたそまつな言い訳でしかない。
「へ~、練習ね。白魔法の勉強しているパロムがなんで『デジョン』 のルーンを唱えていたのかしら?いつから、白魔法になったのか な、デジョン。」
惚けた振りをしつつも、リディアはパロムの弁解に疑問を投げかけ る。
「うう、魔法詠唱する前から居たのかよ~。」
パロムが肩を落としこれ以上の言い訳は無用とばかり、自分のし ようとしたことを認める発言をした。
「私を出し抜こうなんて十年早いわ。やっぱり、パロムには番をして もらう者が必要のようね。」
リディアがそう言うと、高らかに魔法を詠唱し始めた。
「人の糧として、人の従順な僕として、人に限りない恩恵をもたら す者よ、我が召喚に応じよ!!出よ、黄金の鳥獣チョコボ!!」
魔法の完成と共に、甲高い鳴き声が辺りに木霊させながら一匹の チョコボが、リディアの魔法により召喚された。
「いい?召喚者として命じます。この者の魔道書の書き取りが終 わるまで、あなたは見張っているの。もし、この者が書き取りを放 棄し逃げようとした場合、あなたの強力な蹴りを喰らわすのよ。」
チョコボに向かってリディアが命令を下す。そして、チョコボはその 言葉を理解したのか甲高い鳴き声を一つだし、了解の旨を伝えた 。
「けっ、チョコボに見張られるなんて。おいらも堕ちたもんだぜ。」
チョコボに命令するリディアを尻目に、パロムは減らず口をたたく。
「あら、じゃあ『炎の魔神』とか『氷の女王』、それとも『幻獣神』に 見張られるほうが良かったのかしら?もし所望するのなら召喚する けど。」
パロムの言葉を聞いたリディアは微笑みながら、冗談とは言えな い冗談を口にする。パロムとしては怒りの表情ではなく、微笑みを こぼしつつ言う悪い冗談が恐ろしく思う。
「い、いいよ。そもそもバハムートなんてこの講義室に入らねーだ ろ。」
少々、尻込みしつつパロムは言った。
「じゃあ、そういうことだから頑張ってね。」
パロムのことはこれで安心できると思い、手を振りつつ、足早にリ ディアはその場から退出した。
(本当、意地悪いよな・・・。あんなのを嫁にもらうヤツって可愛そう だよ。まあ、好きになるヤツもいるかどうか・・・・。)
完全に脱出を断念したパロムがポツリと心の中で呟く。心の中ぐら い好きに文句付けさせてもらおうと、パロムは半ば自棄になりつつ 、与えられた罰をこなすのであった。

第三話に行きます
第一話に戻ります
小説目次に戻ります