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< 双月 >
- On the night before the decisive battle -
Epilogue 『Earthlight』
「――カイン! どうした!?」
セシルは叫ぶ。
幾たびもの戦闘をくぐり抜け、
月の民の館――その入口に至る石段を駆け上がった時、
しんがりを勤めていたカインの足が止まっていることに気づいたのだ。
また敵か!?
全員の視線が後方へ飛び、緊張が走る。
だが、幾ら気配を探っても敵は無く、
カインは、何の反応もないまま空を見上げているだけだった。
――どうやら敵ではないようだ。
だが、それならカインは何を見ているのだろうか?
皆は、釣られるように彼の視線を追った。
――そこにあるのは、蒼き光――
安寧たる星の海にたゆたいしモノ。
我らの還るべき場所であり、守るべきところ――青き星であった。
皆、その輝きに足を止め、得も言われぬ美しさに心を奪われてしまう。
全員の時間がその瞬間、止まった。
(……これで良かったんだよな)
カインは青き星に向かって、陶然と吐息を漏らした。
それは満足感に満ちた吐息だった。
俺に出来ることは、全て為し終えた。
思い残すことは、もう何一つない。
あと俺に出来るのは……
――二人を守り抜き、この戦いを終わらせ事だけ――
これだけは果たしてみせる。
命に代えても、必ず……この望みだけは。
――それはカインの誓いだった。
どれほどの困難が待ち受けていようと、それだけは……。
蒼き輝きに……そう堅く誓っていた。
カインは目を細める。
だから……
もし、還ることが出来なくても……赦してくれよな
それは、母なる星への別れ。
カインは、空に向かって手を差し伸べかけ――胸の前で留める。
その光を目に焼き付けると、振り切るように顔を振った。
――すると、肩にポンと置かれる手。
セシルだった。
いつのまにか隣まで、やって来ていたのだ。
同じように空を見上げていた彼は、こちらに顔を向けると一つ頷く。
カインには、それで充分だった。
「そうだな……急ごう!」
鬨の声と共に、皆は一斉に走り出す。
その背に蒼き光を浴びながら、館の中へ。
そこにある、終わりの始まりへ……。
そして、その先に在ると信じる、
己の手で掴み取るべき掛け替えのない未来に向かって、
彼らは、力強く駆けていった。
――今――
青き星は、中天で穏やかな光を湛え、
我が子の旅立ちを見守るように、ただ静かに佇んでいる。
その輝きは、母の眼差しのような慈愛を宿して。
――どこまでも、蒼く――
On the night before the decisive battle...
In this way , they were breaking into a Lunar lair for the core of the moon.
They advance so as defeat Them-th.
They advance so as to catch up a comrade who had gone ahead.
And , so as the future of us...
Probably innumerable hardships awaited in front of us.
It is a way to painfully , strenously and dangerous.
...but , they never stop a course.
Because people set hopes on their.
Because people pray for they return to safely after that they fulfill a mission.
And , Cecil's brother is waiting for us at the destination.
They are running as their respective cherish an untold desire.
In the sky ― the earth is standing still as caught the rays of the sun.
Theirs back was lit up with only in the earthlight.
The end of "Sougetsu"
・『徒然なる後書き』へ進みます
・最終話 『二つの月が重なる刻』 -絆-に戻ります
・双月まえがきに戻ります
・小説目次に戻ります
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