+--第1話 召喚の儀--+
今は、楽しい仲間がいる。
笑いあえる仲間がいる。
でも・・・・たまに昔のことを思い出すんだ・・・・・
「ねぇ、お母さん。
なんで、お外に行ってはいけないの?」
「リディア・・・・またその話?」
「だって、私、ミストから出たことないもん」
口をふくらませ、母に抗議をする。
いつも、お母さんは、外に出ようとすると反対する。
この村でミストの村から出られるのは、大人だけ。
子供は、危険だからということで、村の外から出させてくれないのだ。
でも、危険というだけで、何が危険なのかわからない。
それよりも、このときは好奇心がまさっていたんだ。
「外は危険だから・・・・」
(ほら、またそんな話をする・・・)
何回も母から聞いた話だった。
いつも、私が、お外に出たいって言うと、
母は決まって、外は危険だからといって、
はぐらかすのだ。
「何が危険なの?
もう、ずっとこの村にいるの退屈!
私は、外の世界見てみたいの!」
母は困った顔で、私のことを見つめる。
「リディアは、ミストがキライなの?」
「そんなことないわ。
ミストは好きよ。
でも、私、お外のこと、何にもしらないもん。
でも、おかしいと思うの。
なんで、召喚士の儀式をうける成人になるまで、
外に出てはいけないの?
危険があるのなら、 大人になったって、
危険には変わりないでしょ?
それならなんで召喚の儀式を子供のときにうけさせてくれないの?」
私には、ミストの村の掟がわからなかった。
ミストの村では、16になると、召喚士の儀式として、
外の世界にでる。
そして、外の世界の動物達と心を通わせたものが
動物達をあやつり、召喚士として、外に出ることを認められるというものだった。
母や、興奮する私を見て、ため息をつく。
そのあと、やさしい顔をして、ゆっくりと話す。
「あのね・・・リディア。
召喚の儀というのは、命をもかける儀なの・・・
動物や、魔物を操るというのは、言葉でいうのは簡単でも、
実際には、すごく難しいのね。
操ることを失敗すれば、動物は、われを失い、暴れる。
未熟なものが、動物を操ることはできないわ。
動物を操るということは、動物の心をまず知らないといけないの。
そして、動物達の心を知るには、まず自分の心を知らないといけないの。
召喚士とは、何なのか、
自分が本当に召喚士としてやっていきたいのか、
それがわかってからでないといけないの」
「・・・・・・」
「リディア・・・わかる?」
「う~ん・・・・・ちょっとだけ」
ぽよぽよと私は眉をしかめた。
母の言うことは、子供の私にはよくわからなかった。
「いいのよ・・・リディア。
まだわからなくて。
でも、いつか、あなたにも、召喚士というものがどういうものか・・・
それがわかるときがくると思うから。
だから、そのときはお母さんと一緒に、お外に出ましょうね」
「・・・うん、わかった」
しぶしぶだけれど、うなずいた。
お母さんのことは大好きだし、これ以上困らせたくないっていうこともあった。
でも、今日はまた1つお話がきけた。
召喚士っていうのが、どういうものかわからないと、
お外に出られないんだ。
召喚士って、なんなんだろう。
・第2話 「孤独」
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