【第86話】 おとり
武器を取り戻した俺とウッソは出口に向かった。
それほど複雑な場所ではなかったので出口まではウッソの偵察ですぐに着いた。ウッソの偵察どおり二人の人間がたっていた。
見張りは無言で、ゆらゆらと揺れながらその場を立っている。きっと自我を崩壊し、魔物化されたからだろう。武器は槍を持っていた。
「一気にやるぞ・・・」
俺は激痛に耐えながら、致死性のナイフを取り出して狙いを定めた。ウッソも自分の武器を取り出した。ウッソの得意分野は鞭だったが、ナイフを取り出した。
「そのナイフは?」
俺が持つナイフと同じだった。
「たぶん、ラゴスが持っていたナイフだと思う。 一緒に持ってきた。 毒が塗ってあるんだろ?」
「あぁ」
「一本だけ残っていた」
俺も毒ナイフは残りが三本のみだ。
確かに鞭でしとめると時間がかかる。残酷なようだが一撃でしとめないと仲間を呼ばれる可能性もある。
俺とウッソは同時にナイフを投げた。
”ギェエェエエーーー”
見張りが絶叫をあげる。
ウッソのナイフは見事、当たり、見張りは倒れる。
だが俺のナイフは、わずかにそれ、見張りには当たらなかった。くそ・・・痛みで手元が狂った。
見張りはゆっくりとこちらに向く。顔には変な仮面をつけられ、素顔を見ることはできない。
”グアッ!グアッ!”
見張りは奇怪な声をあげた。
「しまった、助けを呼ばれたか」
ただの奇声なのか、仲間を呼ぶ合図なのかはわからないがすぐにこの場を去らなければ。
もう一撃ナイフを投げようと思ったが、見張りが槍を繰り出してきた。
思ったよりもずっと鋭い突きだ。俺はよろけながら、かわす。
「ルーニ、おまえは逃げろ! 俺がこいつをひきつける!!! 生きて親方に報告しろ!」
ウッソはそう言うと、鞭をもって見張りの前に踊り出た。
左腕が使えず、痛みで右手でナイフさえ満足に投げられない俺よりよほど戦力になり、この場を切りぬけられるだろう。
「すまねぇ! 死ぬなよ!」
俺はウッソに叫ぶ。
「あたりめぇだ!」
ウッソは鞭で見張りを挑発し、敵をひきつけてくれた。俺はかけだし、真っ暗な外に身を投げ出した。
第87話 生き残った者
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