【第87話】 生き残った者
出口にいた見張りをウッソと同時に
致死性の毒が塗ってあるナイフを投げてしとめようとした。しかし俺は腕の痛みで、狙いが外れてしまった。ウッソは俺をかばい、敵をひきつけてくれた。
俺は必死で逃げた。
ウッソと一緒に戦うという手段もあったが、俺達は目的を遂行することを第一とする。今、俺達がすることはこのテドン一帯の人体実験が魔王バラモスの配下によることを親方に伝えることが最優先だった。
だが、ウッソを一人置いてきたことには罪悪感もあった。
自分が殺されるという怖さはさほどなかったが、ウッソが敵をひきつける羽目になったのは俺のせいだ。俺がしとめそこなわければ、二人で逃げ出せたはずだ。そのことだけが心残りだ。
しかし、ウッソならあの場を切りぬけられると信じている。今俺ができることは逃げることだ。テドンの船着き場で合流できる、そう信じることにした。
突然、遠くで、悲鳴が聞こえた。
今のは・・・
聞きなれた声のような気がした。
まさか・・・
いや、そんなはずはない。
俺は心の中でウッソが殺されたことを否定した。
しばらくすると、草むらがこそこそと動いた。
「ウッソか!?」
俺はつい声をあげてしまった。
本来なら、こちらから声をかけることはしない。相手が見知らぬ場合もあるし、敵であったときに自分の場所を知らせることになってしまうからだ。
だが、俺はウッソが生きていると信じたかった。だから、声をかけた。
草むらの中からでてきたのは・・・仮面をかぶった先ほどの見張りだった。そして、槍の先は・・・血で塗れていた。
第88話 シャーマン
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