【第160話】

優しさ


どうすればいいの・・・・・

私にはわからない・・・・・・

私にとって、一つの命をたくさんの命。

それは等しい価値なのだから・・・・・・


「やはり・・・・・・・迷いがでましたね・・・・・・

 たぶんこのことを話せばこうなることはわかっていました。

 人間としてすばらしいことだと思うわ」

 

「女王様・・・・・・・・・・・」

 

私は泣き崩れ、座り込んでしまった。

そんな私を女王様は優しく抱いてくれた。

 

「いいのよ、チェルト・・・・・」

 

母親のように、私の髪をなでてくれる。

 

「女王様・・・・・・・・

 私には決断できない・・・・・・・」

 

「チェルト・・・・・・」

 

わたしは子供のように泣きじゃくる。

 

「合格よ・・・・・・」

 

「・・・・・え?」

 

私は泣きはらした顔をあげた。

 

「あなたの今の気持ちを忘れないで。

 一つの命もすべての命も同じであるということを・・・・・・

 その優しさがあれば、あなたはきっと・・・・・・

 試練に合格できる」

 

私には女王様の言っていることがわからなかった。

 

「さぁ、いきましょう」

 

「女王様、で、でも!」

 

私はだま試練を受けるとは決めていない!

 

女王様は両手を組み、何かの呪文を唱える。

 

私の視界が薄れていく。

突然の出来事に対応できない。

 

「チェルト。

 あなたは天界に行きなさい。

 そして試練をうけるのです。

 あなたのその勇気と優しさがあればきっと大丈夫・・・・」

 

「女王様、私は!」

 

「あなたの気持ち・・・・・うれしかった・・・・・・

 その優しさを忘れないで・・・・・」

 

竜の女王様との会話はこれが最後だった。


第161話 記憶

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