【第164話】
心優しきホビット
竜の女王とその夫、新竜、そして、ゾーマの過去を私は見た。
それは夢の出来事のようであり、しかし夢ではない。
世界を真の平和に導こうとした心優しい竜の女王と神竜。
その優しさを利用した、ゾーマ、おまえはけっして許さない・・・・・・
新竜の声が完全に消え、辺りは闇につつまれる。
そして、周りが徐々に明るくなってきた。
気がつくと、そこは、竜の女王のお城の中で、
目の前で、門兵をしていたホビットが声をなしに泣いていた。
私の気配に気がつくと、ホビットはその行為をばれないように、後ろ向いた。
「あの・・・・・・・・・」
「女王様が・・・・・・・逝かれてしまった・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・女王様には、天界にいらしたときから、仕えておった。
とても、気さくな方で、我々ホビット族にもよくしてくれた。
そして、何よりも、平和を愛しておられた・・・・・・・
だが、ゾーマの出現により、我々の部族のほとんどは皆殺しにされてしまった。
ゾーマだけでない。おまえたち人間もそうだ。
なぜ、人間は平気に仲間を裏切ることはできる?」
「それは・・・・・・・」
違うと言いたいが、否定できないことも事実だ。
「だから、儂らは、人間を信じることができない。
女王様が亡くなられたばかりで、今の儂には何もおまえに言うことができない。
だが、別に、おまえを憎んではいない。
そして、わかってほしい・・・・・・・・・・・
女王様がおまえに・・・・・・・おまえ達人間に・・・・・・・何を託したかを・・・・・・・・・・」
「・・・・・・わかっている・・・・・・・・つもりです・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・おまえは、いい目をしている。
さぁ、ゆけ・・・・・・・・・
おまえが探しているものは、ネクロゴンドにあるギアガの大穴にある。
そこから、ゾーマのいる世界にいけるだろう」
「・・・・・・・・・わかりました」
もっとこのホビットさんとお話ししたかった。
でも、立ち去るべきだと思った。
彼は、私以上に、女王のことを想い、そして、悲しみもつらいから・・・・・・・
最後に気になることがあった。
「あなたは・・・・・・・これからどうなさるのですか?」
「儂か・・・・・・・・・・・・・」
第165話 竜の女王が残した物
前ページ:第163話 「もう一人のわたし」に戻ります
目次に戻ります
ドラゴンクエスト 小説 パステル・ミディリンのTopに戻ります