【第272話】
メルキド大戦
カンダタは、何があっても私の命を守ると誓ってくれた。とてもうれしかった。
魔物の大群はすぐそこまで来ている。私はこの戦いで生き残らないといけない。勝利をおさめなければいけない。
「じゃぁ、手筈どおりいくわよ」
「あぁ・・・」
私は体中の魔法力をかき集めた。衝突する前に少しでも敵の数を減らさないといけない。
そのため、まず私が最初から最強魔法ギガデインを魔王軍にぶつけることになっていた。
そのあともう1つの魔法を使い士気をあげ、本隊が接触、私はしばらくは消耗して満足に動けないかもしれないから私が回復するまでカンダタ達がガードをしてくれることになっている。
ギガデインを唱えるほどの魔力を集めるには時間がかかる。しばらくすると、暗かった空に渦ができてきた。天空に雷雲を呼び寄せる。
「すげぇ雷雲だぜ・・・」
周りの兵士も突然の雷雲に驚きを隠せないようだった。
「これが、勇者だけが使うことができるギガデインか・・・・」
カンダタがそんなことをつぶやいていたが集中していた私には耳に入らなかった。
ただ、みんなを救わなければいけない、そのために戦わなければいけない、たとえ私がたくさんの魔物を奪おうとも最後の戦いのためにたどり着くためにこの戦いに勝たなければいけない生き残らなければいけない、戦いつづけなければいけない、その想いだけを胸に刻みつけ、魔法力をたかめ、雷雲をさらに大きくする。そして・・・・・・ねらいをさだめ・・・・
「ギガデイン!!!」
呪文の掛け声と同時に全魔法力を開放した。巨大な雷雲から、何本もの雷が魔王軍に降り注ぐ。
突然の雷雲に魔王軍はパニックになる。しかし気がついたときは、何百もの魔物の姿かが消し飛んでいた。
「やったぞ、チェルト!」
カンダタの喜んだ声が聞こえる。
少しでもみんなの役にたてたという思いと大量の魔物の命を奪ったという罪悪感の2つが私の心をしめた。
だが、すぐさま次の魔法の詠唱に入る。初めて使う魔法だが味方の士気を上げ、傷ついたものを完全回復するため回復最上級魔法「ベホマズン」を唱える。
個人の魔法力によってどれだけの人に魔法が行き渡るかわからないが私のベホマズンは多くの人の傷を回復させた。
「すごい・・・・力があふれて来るぞ!」
「これなら負けないぜ!」
あちこちから戦士達の声が聞こえてくる。
魔法の詠唱が終わった後かなりの魔法力を消費したため体の力が抜けて倒れかける。
そこをカンダタがすぐに支えてくれた。
「よくやった。
あとは、俺たちにまかせろ。
お前が消耗している間
回復するまでは、俺たちで持ちこたえてみせる」
「うん」
そううなずいて、ゆっくりと力の感覚を取り戻しながら剣を抜く。
「大丈夫・・か?」
「今すぐには魔王軍の中心に行って戦えないかもしれないけれど 自分の身くらいは守れるわ」
「そうか・・・・」
「とにかく敵の中心を見分けないと。 今のギガデインで、敵の中心が倒れてくれたのなら助かるけれど・・・ そうしないと、魔物たちをすべて倒さないといけなくなるから・・・」
「わかった。
とにかくお前は少しでも回復につとめていろ」
そういってカンダタと数人の兵士や僧侶それとメルキドで一番の魔法が使える魔法使いが私を囲んでくれた。
第273話 雷神の剣
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