【第286話】
甘さの克服
ドラゴンロードをかけあがると魔物達の死体が転がっていた。その数はかなりのものだ。激戦を物語っていたが、魔物達の死体を見て気がついたことは、傷は、剣によるもののようだった。やはり、このドラゴンロードにオルテガが来たに違いない。
ドラゴンロードをかけあがる、私。
疲れていても息切れしても私は立ち止まらなかった。ひたすら走った。とにかく頂上を目指した。
「チェルト~待ってよぉ~」
普段なら私よりはぐりんの方がすばしっこいけれど、この時ばかりは、はぐりんが先にばててしまったようだ。
「ご、ごめん・・・・・」
はぐりんを肩に乗せていけば、こんなことはなかったのだけれどすっかりとこの時ははぐりんの存在を忘れていた。
「はぐりん、肩に乗って!」
「う、うん!」
はぐりんはぴょんと私の肩にへばりつく。それを確認したあと、私は再度かけだした。
すると、目の前に巨大な熊が立ちはだかった。きれいなブルーの色を持ったアレフガルド最強の大熊ダースリカントだ。ダースリカントはよだれをたらしながら近づいて私の進路をふさぐ。
この大熊、久々の食事にありつこうとでも思ったのだろうか。
しかし私には戦っている時間はない。一刻も先に頂上に向かわなければいけない。剣を弾きぬくと、ダースリカントに向かって
「もし私の邪魔をするのなら容赦しないわよ!」
と叫んだ。そして、殺気を出してダースリカントを威嚇する。
一流の戦士は気をはりめぐらせることできる。その気は、生気であり、殺気であり、気により、様々な影響を与えることができる。
生気は相手に活力を与え、殺気は相手を威嚇することができる。
戦や地生臭い戦いは・・・・キライ。だけれど、戦いへの甘さが、たくさんの人の命を奪わせ、犠牲を出すこともある。カンダタも犠牲になった。
戦いには非情にならなければいけないときもある。戦わざるを得ないときでしか戦いたくないけれど、避けられない戦いが得たときは絶対に死ぬわけにはいかない、勝利をしなければいけない、それが戦士としてやっていくための条件だ。
もし私と戦うのなら確実に一撃で息の根を止める、そういう殺気と威圧感をダースリカントに向けた。
襲いかかろうとしていた私の数倍の大きさを持つダースリカントは相手の強さを本能的に察したのかとどまった。
そこで、私は魔法力を高めて歩め剣をふってさらに一歩踏み込んだ。絶対に引かない姿勢だ。
さらに一歩、歩み出た。魔法力が空気と干渉してあたりに火花が散る。尋常でない気配をダースリカントも感じ、一度は襲おうとしたダースリカントはおびえるように来た道を戻っていった。
第287話 無人の祠
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