【第287話】
無人の祠
アレフガルド最強の大熊ダースリカウントが現れた。無益な戦いはしたくないが、もし阻むものがいれば倒すしかない。私の殺気と魔法力でダースリカウントはおびえたように逃げていった。
私はさらに頂上を目指した。その間に、何匹かの魔物が襲ってきたけれどどの魔物も私が断じて引かないことを見せると何匹かは戦わずにして逃げていった。
しかし中には襲ってきた敵もいた。そして襲ってきた敵には感情を捨て容赦なく切り伏せた。
そして・・・・頂上に・・ついた・・・・・・
普通なら半日くらいかかる距離だったかもしれないが3時間くらいで頂上についた。
頂上には祠があった。自然にできた祠からと思ったが、中に入ってみると意外にきれいでドラゴンの像なども飾られていて何ものかの手で作られていたのは明らかだった。
「ここの場所と、何か竜騎士になるには関係あるのかしら・・・・」
祠はそれほど広くなく、中央に祭壇が1つ、それと左右に小さい部屋が2つあるだけだった。
とてもこの部屋にドラゴンが入れるスペースはないし、ドラゴンや人の気配もない。
「父さん!」
私は大きい声で叫ぶが、自分の声が祠の中で反響するだけだった。
「父さん!」
もう一度叫んだ。だけれど答えはなかった。
たとえ父でなくてももし誰かがここにいれば出てきてくれるはず。
「オルテガも、もうここを去ったのかしら・・・・ それともさっきの地震と火柱でオルテガはもう・・・」
イヤな考えが頭に浮かぶがそんなことはないと自分に言い聞かせ、振り払う。
しかし、ここに誰もいないことは確かで脱力して、落ち込みながらうつむく。
すると、突如外からドラゴンの咆哮が聞こえた。
凄まじい咆哮だ。一瞬動けなくなった。
ドラゴンの咆哮は恐怖のため、人の心を砕く一種の精神魔法の効果があるのはサラマンダー戦で体験済みだが、とにかく凄まじい。心臓をつかまれた様な咆哮だった。
しかしすぐに私の体は自由を取り戻した。
サラマンダー戦のときは、はぐりんの虹色の波動のおかげで取り払ったが、メルキド大戦での経験が私を強くして魔法の抵抗力もあげたようだ。
ドラゴンの咆哮を聞いても耐えられるようになっていた。
もう一回、ドラゴンの咆哮がなった。しかし、今度の咆哮は恐怖を感じなかった。
どこか・・・・悲しげな叫び声だ。
あわてて祠の外に出ると、曇った空にかすかだが遠くに何か見える・・・・・・
さらに、もう一回咆哮が聞こえた。
あれが・・・・・・ドラゴン?
まるで・・・・悲しくて泣いているみたい・・・・・
第288話 オルテガの軌跡
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