【第302話】
海の魔王
伝説の神器、それは人間が犯した罪の試練として作られたものだった。そしてその神器は人間の手だけではなく、ドワーフやエルフの手にもよって作られた種族を越えたものだった。
「歴史をひもといていくと人間は本当に愚かな存在だとわかる。
しかしその愚かな人間を救ってくださったのはルビス様なのだ。
我々はルビス様をお救いしなければいけない義務があるのだ。
話はそれたが、その記録に光の鎧のありかも記述されておった。
ルビスの塔だが、もともとあの塔は神を祭るために作られたらしい塔で
伝説の神器の3つもそこにあったのだ。
だが、お主も知っているとおり、大魔王ゾーマの出現により
ルビス様は封印、王者の剣は破壊され、勇者の盾は沈黙の洞窟に運び込まれたようだ。
だが、光の鎧はそこに安置されたままで、そのかわり、魔王の手下を多く置くことで
誰の手にも渡らないようにしているらしい」
「では、ルビスの塔に光の鎧がある可能性があるということですね」
「うむ。
しかしルビスの塔に魔物の数が多い上、
たどりつくまでに海の魔王とも遭遇するかもしれん」
「海の魔王? 凶暴な海の魔物がいるとは聞いたことがありますが」
「そのところ、実際にどういう魔物だかはわからん。
その魔物に出会って生きて帰ってきたものがいないからだ。
今まで、何度も兵を派遣して、ルビス様をお助けしようとした。
しかし 生きて帰ってきたのは運よく海の魔王に
遭遇しないでルビスの塔にたどりついたもののみ。
しかも最上階まではおろか、2階までたどり着くのが限界だったらしい。
あとはそこで死ぬか引き返すかだ」
ルビスの塔での戦いもそうだがその前の海での戦い。確かに海の戦いは、私たち人間にとって不利だ。船を壊されたらそこで溺れ死ぬのみだ。
「そこでお主を呼んだのだ。
そなたもいつかは、ルビスの塔に行かねばならぬまい。
ラダトームの軍船を貸し与えよう。
もちろん乗組員もな。
まずは海の魔王を退治するのだ」
「しかし・・・・・」
「無論危険なことをお主に頼もうというのはわかっておる。
それで海の魔王の実状がどのようなものか知らせて欲しい」
「いえ、そういうことではなく 私はいいのですが、他の方に危険をおかすわけには・・・・」
「チェルトよ」
王は立ちあがって威厳を持って言った。
「これはお主だけの戦いではないのだ。
ラダトーム、いやアレフガルドに住む生きる者すべての戦いなのだ。
おぬしは以前ワシに言ったではないか。
大魔王に負けるな、希望を持てと。
我々は自らの意志で自由を得る為、太陽の光を取り戻すため戦うのだ」
「・・・・わかりました」
軍船には600人ほどの人が集められた。
100人ずつ、6つの軍船に乗り、ルビスの塔を目指す。
果たして、何隻が塔にたどり着くことができるのか。
元船乗り、城に長年仕えラダトームでの大戦をも生きぬいた王宮戦士、それに数十人だが癒しの使い手の僧侶や、魔法使いもいた。
600人という大人数だが、それでもルビスの塔にいると思われる魔物の数には半分も満たないかもしれない。まずはその海の魔王を退けることが最初だ。しかし私一人で海を越えることは不可能なため、ここは王の言葉に従うしかなかった。王にはイヤとは言わせないほどの威厳があった。しかしそれほど、王が生気を取り戻し、たくましくなったのは国力を取り戻した結果でもあるので喜ばしいことかもしれない。
第303話 勇者の気持ち
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