【第312話】
頭に響く声
沈む船。この世のものとは思えない生物の攻撃で船はまっぷたつにされてしまった。このままでは全滅は免れない。私はルーラで一人でも多くの人達が戻れるよう叫んだ。
その言葉が届いたのか、それとも事前に船がやられたときの訓練をしておいたのが良かったのか船員達は落ち着きを取り戻して、魔法が使えるものの回りに集結した。残りの二隻は、海の魔王から逃れようと回避する。
しかし海の魔王は第二波の攻撃を加えようと一本の足をまた天にかかげた。次に攻撃をうけたら、船は跡形もなくバラバラになってしまうだろう。
そのとき、この緊迫した雰囲気には似あわないきれいなメロディーが聞こえてきた。
「ガライさん!」
音がした方を見るとガライさんは体勢を崩しながらも必死に銀の竪琴で演奏をした。その竪琴の音色はとてもきれいで優雅だった。そして驚いたことにあの巨大な生物の海の魔王が動きを止めていた。
「すごい・・・・・・」
しかし海の魔王を改めて見ると痙攣しているようだ。ガライさんの歌に反発しようとするのか、それとも自分の有り余る力を抑え込んでいるか私にはそのように見えた。
先ほどのように暴れるのは時間の問題のように思える。ガライさんが抑え込んでいる間にとにかくみんなを逃がさなきゃ!
その時である。
”ニゲロ”
突然人間の声とは思えない、とても聞き取りにくいだが確かに声が聞こえた。私はあたりを見渡した。しかし、周りの船員達はその声を聞こえた様子はなかった。
”ニゲロ”
また聞こえた。いや・・・・・聞こえたのではない。頭の中に直接言葉が入ってきたのだ。
”ニゲテクレ”
私は言葉が頭に入ってきた方向を見た。・・・・・・・・もしや・・・・・・海の魔王の言葉!?
第313話 クラーゴン
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