【第315話】
鋼鉄魔法アストロン
クラーゴンの呪いを解く手段は呪いをかけた術者、つまり大魔王ゾーマがこの世からいなくなるかかけられたものが、死ぬかのどちらかしかなかった。銀の竪琴の力で理性を保っていたクラーゴンも限界がきて、再度暴れ始めた。
私はクラーゴンに必死に呼びかけたがクラーゴンは暴れるだけ。それは海に再度津波に匹敵するほどの波を起させた。
ラダトームを出発した全六隻のうち、三隻の船は別行動をしているためルビスの塔についていると信じたいが、私たちと共にした二隻の船は狙われることになった。再度クラーゴンによる攻撃は別の船を餌食とした。一隻の船は、二本の足で帆をおられ、船はバラバラになり一瞬で完全に沈没してしまった。ルーラで逃げる暇もなく、百人もの命が一瞬で消えた。残り一隻は果敢に、海の魔王の攻撃を避けルビスの塔をめがけて先に進む。
私たちがいた船はもう限界で、船の3分の2が沈んでいた。船員は魔法使いの回りに集まっている。ガライさんもいた。
「さぁ、チェルトさんもこちらに!」
ここは一時撤退しかない。私もルーラは使えるが、みんなの前に行こうとした。
「チェルトさん、上!!!!」
誰かがそう叫んだ。上を見ると、大木よりも太いクラーゴンの足が振りかざされていた。
私は考えるよりも先に防御魔法アストロンを唱えた。肉体全身が鋼鉄と化す。
船を壊すほどの攻撃だ。まともにくらったら私の体は粉々に砕けて肉塊も残らないだろう。ルーラの魔法は目的地を思い浮かべるのに時間がかかるため、とっさにでた行動だった。
この攻撃を凌いだところで、鋼鉄の私の体は海の底に沈むはずだ。魔法がとけた瞬間、溺れ死ぬかもしれない。しかし私にはこれしかできなかった。私の意識はそこで消えた。
第316話 消えたはぐりん
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