【第316話】
消えたはぐりん
ガライさんの竪琴の魔力も虚しく理性を失ったクラーゴンは再度暴れた。クラーゴンの攻撃は一隻の船を沈め百人もの命が一瞬で消えた。私もクラーゴンの攻撃の直撃をうけそうになってアストロンを唱えた。そのあとの記憶はない。
「う・・・・ん・・・・・」
静かに目をあける。私は気がつくと砂浜にいた。近くからは静かに波の音が聞こえる。体を起すと、私の髪に砂がついていてパラパラと落ちる。足に鈍い痛みがあった。
「うっ・・・・・・」
もしかしたらヒビか悪ければ骨折をしているのかもしれない。私は足首に手をあてベホマを唱える。魔法はすぐに効果をあらわし足の痛みは消えた。
それにしても何故私は砂浜にいるのだろう。海の中でアストロンの魔法がとけるかと思ったが・・・・・アストロンが解けた後、私を陸まで連れてきてくれた人がいたのだろうか。私は何故無事だったのかわからなかったが夢ではないようだし、とりあえず命拾いはしたようだ。
しかし回りには誰もいなく、私一人だということに気が付く。ガライさんをはじめ、船に乗っていた人は無事脱出できたのだろうか。
私は立ち上がり、近くにあった砂まみれの自分の荷物を背負う。そのとき異変に気がついた。
「はぐりん!?」
はぐりんがいない。荷物袋の中にいたはずのはぐりんがいない!まさか海ではぐりんが取り残されたのでは!
「はぐりん!!!!」
私は辺りを見渡した。砂浜を注意深く見る。もしはぐりんがこの場を偵察しているのであれば砂浜にはぐりんのはった跡があるはずだ。しかしそのようなものは見かけなかった。
「はぐりん・・・・・・」
なんてことをしてしまったんだろう。アストロンをかける瞬間はぐりんが側にいなかったのか呪文が解けた瞬間はぐりんとはぐれてしまったのか。私はいつも側にいたはぐりんがいないことで愕然とした。
はぐりんと出会ったのはネクロゴンドだった。生まれたときから孤独だったはぐりんは親のことを知らなかった。私は母親は今でもアリアハンにいるが父のオルテガの記憶がないことに自分を重ねた。だから両親を探してあげたいと思った。それがこのような結果に・・・・・
私は大切な仲間を失った絶望感に打ちひしがれた。
第317話 無人の船
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