【第318話】
二つの死体
アストロンの魔法がとけ、気が付くと私は砂浜にいた。半分は海底で溺れる覚悟の魔法だったが私は一命をとりとめた。ベホマで足の痛みを直したあと、海岸線を歩いていると二隻の無人の軍船があった。それはラダトームの軍船だった。私はこの流れついた島をもう少し調べることにした。
海岸沿いに歩いていたが、軍船があった砂浜の先は絶壁が立ちはだかり先に進むことができなかった。それで島の内部に進むことにしたが、すぐに闇の森がある。足跡は森の中まで続いていたが、そのあと森の雑草などに阻まれて足跡がどこにあるかが判別できなかった。またアレフガルドは常に夜のためガライさんがいた森の中でもそうだったが、かなりの危険が付きまとう。
私は魔物に気を付けながら慎重に森の中を進んでいった。幸運というか森では一匹の魔物も遭遇せず森を抜けることができた。すると、目の前に大きな塔がそびえたっていた。
「ルビスの・・・・塔?」
確信は持てなかったが、目の前の塔はたくさんの彫刻が彫りこまれ神聖な塔を思わせた。しかしその中からは邪悪な気がひしひしと感じる。
「気を抜くわけにはいかないわね」
いつでも敵の攻撃に反応できるよう、私は勇者の盾を背中からはずしてかまえた。手は腰にあて稲妻の剣をいつでも抜く準備をする。王者の剣は背中の鞘にさしたままだ。王者の剣の威力も試してみたいが、今は戦いなれている剣で一刻も早くルビス様をお助けするべきたと思う。
塔に足を踏みいれると、入り口に二人の人間の死体が無残な姿で倒れていた。一人は頭部がなく、首のところから血が飛び散っている。もう一つの死体は無残にも腹が食いちぎられていた。
「やはり、魔物が・・・・」
なんて、残酷なことを・・・と思う。だが、動物は肉を食べる。人間だって、動物を狩って食べる。魔物達は、人間を捕食するのがあたりまえなのだろう。やつらにとっては私たちは食料にすぎないのだ。
その現実を塔に入る前から思い知らされたような気がした。
私がその死体を見ていると頭上から突然、おたけびが聞こえた。
第319話 サタンパピー
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