【第338話】

死神


五階の通路から放り出された私は地面に激突した。

体には激痛が走る。

全身がバラバラになるほど、痛い・・・・




「うっ・・・うっ・・・・・」


うめきながら汗と涙を流す。身動きがほとんど取れない。

全身の骨がバラバラになったようだ。

痛いというレベルではない。

絶叫したい。この場から逃げたい。楽にして欲しい。

耳元で死神がささやいているようだった。


しかし私は生きなければいけない。

この場で死ぬわけにはいかない。


私は気を失う前に自分でベホマを唱え続けた。

もし唱えないで気を失えば私はここで死んでしまう。

激痛で意識は朦朧としていたが、ここで死んではダメだという精神が

私を支え魔法を唱えさせた。


死への入り口は近いと思われた。

だが私は傷を癒すことだけを考えた。

魔法を唱えることだけに集中した。

それは、時間としては一瞬だったのかもしれない。

しかし私にはすごく長い時間のように感じた。


しばらくすると少しずつではあるが体の痛みが和らぎ

全身の骨格が元通りになっていくのがわかった。


痛みはかなり残っているが数分魔法を唱え続けると

とりあえず、体を起せるようになった。


「・・・・・危なかった・・・・・」


よく「死ぬかと思った」と言う人がいるが、

本当にこの時だけは私も死ぬかと思った。


一階に落ちる直前に体が減速し、頭部を打たなかったのが幸いだったのだろう。

もし頭を地面に叩きつけらていたら私の頭は粉砕し即死だったに違いない。


自分が空中で動きを変える術を持っていたことと

回復魔法が使えたことがこれほどありがたいと思ったことはなかった。


五階で、祈りの指輪で魔力を回復しておいてよかった。

もし魔力がなかったら、空中で動きも減速できなかったし

回復魔法も唱えられなかっただろう。


しかし・・・また一階に落とされてしまった。

せっかく、五階まで行ったのに・・・

これほど凶悪な塔ははじめてだった。

ルビスの塔を魔物達は相当改造しているようだった。

そこまで重要な拠点なのだ。


第339話 モンスターハウス

前ページ:第337話 「最後のトラップ」に戻ります

目次に戻ります

ドラゴンクエスト 小説 パステル・ミディリンのTopに戻ります