【第359話】 はぐりんが語るスライムの歴史3
食べるものがなくなったスライムは食料を求めて東西南北に散った。虫を食べることによって飢えを凌ぐスライム、肉食動物から逃げ、海に身投げするスライム。彼らは生きる場所を手に入れるため必死だった。
海で生き残ったスライムは泳ぎを覚えていって草の代わりに海草やプランクトン、小魚を食べて暮らしていったんだ。海は食料が豊富だったため、食べるものには困らなかった。スライム達は、一度は数を減らしたけれど順調に数を増やしていった。
しかし北に向かったスライムをねらった肉食動物同様、海にもスライムを餌とする数を増やした獲物をねらわれていったんだ。ガニラスなどの大型のモンスターがスライムを補食したこともあった。
「スライムは本当に外敵からねらわれる生活が多かったんだね…」
私ははぐりんの話を聞いて、彼らの生活がどれだけ大変だったのかそれを初めて知った。
人間にとってはスライムは外敵として、モンスターとして、人間からも嫌われていた。しかしそのスライムにも自分が生まれた土地があり、生きるために進化していった。
「私は偶然はぐりんと出会って、魔物にも心があることを知ったけれど ほとんどの人間がスライムを、いや他の魔物も含めて 外敵としか思ってないんだろうね。 まして魔物からも狙われて、餌とされていて。 彼らは彼らで必死なだけなのに…」
はぐりんの話は続いた。
数では勝る物の、攻撃手段がないスライムはどうにか外敵から身を守ろうと知恵を振り絞った。
「どうしよう… あのカニのお化けが…」
「このままじゃ地上にいたときと同じだよ」
「ボク達はただの餌じゃない!」
「あっ…あの貝殻は…」
スライムが偶然見つけた大きな貝殻。それが彼らの命をつなぐことになった。堅い貝殻に隠れて、ガニラスなどの外敵から身を守ることになったんだ。
また、海の豊富なカルシウムな餌が多かったため生まれたスライムが最初から殻を持ったスライムが生まれた。それがマリンスライムの始まりだった。マリンスライムは順調にその数を増やしていったんだ。
だけれど、海にはさらなる外敵がいた。大王イカクラスの巨大な魔物には貝殻も紙切れに等しかった。
「また今日も仲間が30匹も食べられちゃったよ!」
「せっかく身を守る方法を見つけたのに!」
「陸にも住めない、海にも住めない、 ボク達はどこに行けばいいんだ…」
マリンスライム達は絶望に打ちひしがれた。
「あきらめてはいかんぞい」
「長老…」
「我々スライム達は故郷の草原を離れていらい、様々な困難に出会ってきた。 だが、一度ともあきらめたことがなく、自分の道を切り開いてきた もしご先祖様があきらめていたら、今日の私たちはなかった」
「それはそうですが…」
「あの子供達の寝顔を見るんじゃ。 わしらが絶望したら誰があの子供達を守るんじゃ」
そこにはマリンスライムの子供達に子守歌を歌う母親の姿があった。マリンスライムの子供はそれを聞いてすやすや眠っていった。
「ほんと、よく寝てる…」
「…!? そうか、何も倒す必要をないんだ!」
「そういうことじゃ。 我々には力もない。じゃが知恵がある。 何かを守ろうという力がある。 その力を忘れちゃいけないぞい」
「長老、大王イカがまた襲ってきました!」
「みんなで祈るんじゃ。 我々は一匹じゃ非力じゃ。 しかし力を合わせて、我が子を思って祈るんじゃ」
スライム達の祈りは、巨大な大王イカを眠らせてしまった。それが後にラリホーの魔法となり、さらにスライムは殻の強度をさらに上げるスクルトや攻撃魔法のヒャドもこのときも使えるようになったんだ。これがスライムつむりの始まりなんだね。
第360話 はぐりんが語るスライムの歴史4
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