【第362話】 はぐりんが語るスライムの歴史6
バブルスライムの誕生。それは腐った死体と毒の沼地の出会いから始まった。体に毒を含んでいる餌にするような敵はいない。だからバブルスライムは今までのように外敵から襲われるようなこともなくなったんだ。
毒の沼地にいるだけでお腹は空かないから食べ物の心配もないし、安住の地を見つけたんだ。そんなバブルスライムは毒の沼地で徐々に数を増やしていった。バブルスライムから生まれた子供はバブルスライムで子供達も毒の沼地に適応ができた。
「ねぇねぇ、おかあさん」
「なぁに?」
「ボク達、この沼地から出たいよ!」
「まぁ、この子ったらなんてこと言うの」
「だって、ここにいたって何もないし、つまらないもん!」
「なんて贅沢な子なんでしょう。ねぇ、お父さん?」
「そうだぞ。お父さんや、お父さんのお父さんは食べ物がなくひもじい思いをずっとしてきたんだ。 しかし今は食べ物に困らないんだ。ここにいればお腹が減らないんだから。 おまえたちは幸せなんだぞ」
「でもでも、つまらないんだもん!
そうだよ、ボク達生まれたときからずっとここにいて、
外の世界を知らないから、外に世界を知りたい!」
バブルスライム達は幸せに暮らしていた。食べ物にも困らず、外敵にも狙われず平和に過ごしていたんだ。けれど、生まれてきた子供達で好奇心旺盛なバブルスライム達がいてどうしても外の世界を知りたかったバブルスライムの子供達の何匹かが群を離れて、旅に出たんだね。
これはスライム達にとっては大きな変化だったんだ。だって、ボクらの先祖が旅にでる目的はいつも食べ物がなくて飢えをしのぐための旅だったんだ。
しかし好奇心により、旅を出たのはこれが初めてだったんだね。
初めて出る外の世界。バブルスライム達は期待に満ちた顔で旅を続けたんだ。
「あれ? なんか、あそこに煙がでているよ」
バブルスライム達が歩みを進めていると煙が出ている山を見つけた。
「よし、行ってみよう!」
好奇心旺盛なバブルスライムの子供達はその煙の出る山に向かっていく。しかしバブルスライム達は体の不調がでてきた。
「なんか、苦しくない?」
「う~ん、ちょっと息苦しいかも…」
山の上に登っていくにつれて酸素が少なくなっていったこともあった。しかしバブルスライム達は毒の沼地で生活するようになって普通の環境で生活ができなくなっていたんだ。
「はぁ…はぁ…」
「どうしよう…」
息を切らせながら、バブルスライムが先に進んでいくと小さな毒々しい沼地があった。
「あ、あそこに沼地がある! あそこで一休みをしよう!」
子供達は次々と毒の沼地にとびこんだ。
「はぁ…たすかった…」
バブルスライム達はそこで休憩しているときだった。
「あなたたち…そんなところにいて…大丈夫なの?」
突然声がした。毒の沼地の近くに口と鼻を覆いながら覗き込んでいる少女がいた。
第363話 はぐりんが語るスライムの歴史7
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