【第414話】


辺りは闇に包まれ何も見えない。

しかし私にはわかった。

目の前に大魔王がいることが。




「姿を現しなさい!」


”笑止。既に現れているではないか”


「何を…」


”この闇こそ余の姿。

 故におまえがいるこの空間こそが余の体の中”


「………」


ということは魔王の影のように実体を持たないものなの?


”神具の力を借りたとはいえ、ここまで来るとは予想外であった。

 メルキドではキングヒドラを退け、封印したルビスを蘇らせたこともな。

 人間一人の力など侮っていたが、もっと早く手を打つべきであったか”


「私一人の力ではないわ。

 今まで支えてきてくれた人がいっぱいいる。

 だから私はここまで来られた」


”そんなことは余にはどうでもよいこと。

 だが、このままおまえを放っておくこともできないようだ。

 おまえにここで死んでもらう”


私は身構えた。

しかしどうすればよい?

相手は闇だ。

闇に攻撃をすることなんてできない。

それを見透かしたようにゾーマは言う。


”ただし余にはおまえが見えても

 おまえには闇である余に傷をつけることができまい。

 そこで機会をやろう”


「機会?」


”余の作りだした配下達と戦ってもらう。

 余の配下に勝った暁にはおまえに余の姿を見せてやろう”


「何でそんな面倒くさいことしなければいけないのよ。

 この臆病者、さっさと姿、現しなさい!」


私は挑発の言葉をかけた。

言葉が荒いが、言っていることには意味がある。

大魔王と戦うだけで私は全力で戦うことになる。

その前に配下と戦って消耗をしたくないからだ。


また配下に勝ったからといってその後姿を現してくれる確証もない。

挑発にのり、姿を表してくれれば配下と戦う必要は無い。

しかしゾーマから返ってきた言葉は先ほどと変わらない声だった。


”臆病者とは面白いことを言う。

 キングヒドラがおまえと戦わせろとうるさいのでな。

 よほどメルキドで傷つけられたのが悔しいのであろう”


「何故そんな条件を出す?

 キングヒドラが言ったから?」


”一つはおまえが余と戦う資格があるかを知るためだ。

 我が配下に勝てぬようであれば、余が戦う必要は無し。

 もう一つはおまえのもがき苦しむ姿が余は見たいのだ。

 人が苦しみ、絶望する姿こそ、我が力。

 さぁ、おまえの力を見せて余を楽しませてみろ”


第415話 キングヒドラ戦5

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