【第430話】 勇者の挑戦
大魔王ゾーマの言っていることは理解できる。だが心は納得しない。今、私ができること。それは大魔王を倒し魔物達を解放することだ。
巨大なゾーマの顔に向かって、王者の剣を振りかざした。剣の魔力が解放されバギクロスが放たれる。ゾーマの顔は音も無く消えた。
瞬間移動!?アークマージとの戦いの経験が役立つ。私はとっさに今いる場所を離れた。わずかの差で私がいた場所にゾーマが現れる。無表情なゾーマの顔から広範囲の吹雪がはきだされた。勇者の盾を使って防御をする。
完全に遮断されるはずだった吹雪。勇者の盾はよく吹雪から私を守ってくれた。だが直撃でないにしろ、辺りを被う吹雪の影響で私の鎧には霜がかかっている。それが大魔王の恐ろしさを表していた。余波でさえ勇者の防御で守りきれないのだ。直撃を受けていれれば、勇者の盾で守ってもタダでは済まない。
・・・恐怖に打ち負けては勝てない。私は再度王者の剣を振りかざし、剣の魔力を解放する。同時に炎のブーメランを背後に投げた。アークマージのときと同じ戦い方だ。
ゾーマはバキクロスをかわすため、姿を消す。私はゾーマの気配を感じた瞬間、さらにその場を離れた。ゾーマは私の行動を先よみし、私が二度目に移動した背後に現れた。よしブーメランが命中する!
しかし驚いた事に炎のブーメランはまるでガスのようにゾーマの顔を通りぬけた。
「え!?」
手応えが無い!?一瞬驚きの間が命取りだった。ゾーマは吹雪をはいた。私は反射的に勇者の盾で防御をしたが、直撃を吸収しきれない。凍える吹雪は光の鎧と勇者の盾を通り抜け、中の私の肉体をも凍りつかせた。体が崩れ落ちる。回復魔法を使いたかったが、口が動かない。魔法を唱えることができない。
”他愛も無い”
ゾーマの感情の無い声が闇の中に響き渡った。
第431話 勇者の挑戦2
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