これから先、何年こういう生活が続くのかは分からないが、頭がおかしくなる前 にこの備忘録を残しておこうと思う。
まともに字を書くのは初めてのように思う。入ったばかりの頃優しくしてくれた 仲間に読み書きは教えてもらったものの、それを使う機会が無かった。おかげで 書くのにずいぶん時間がかかる。
こうやって物を書いていると、あの日記を思い出す。確か長旅からサンタローズ に戻る途中、ビスタの港に着く前の晩だったか、父さんが真新しい本をくれた。
教会で冒険の書を書いてもらえば、という僕に、心を残す事の大切さを語ってく れたものだったが、読み書きの授業すら最後まで終わらないうちに、父さんは死 んでしまった。
こまめに書くようにしなさいといっていたが、あれから十何年も過ぎてしまった ろうか。三日坊主どころではなかったわけだ。
ここの生活を書いてもどうせしばらくはまったく代わり映えもしないだろう。暇 を見つけては、ここに入る前の生活で思い出した事を、書き残しておく事にする。
さあ書こうと思ったが、早くも就寝時間だ。疲れてもいるし、寝る。