20年前、この部屋で僕が生まれた。僕を抱えた父さんがこのベッドの横に立って
母さんを見守っていると、その目の前で母さんは不思議な力に包まれて、そのま
ま連れ去られていったという。
そして昨日、ビアンカがさらわれてしまった。
子供は無事だったけれども、ビアンカはどこにいったのか分からない。
今、兵士たちが必死で行方を追っている。国民のあいだでは動揺が広がっている。僕がパパス王のように王位を捨てるのではないかと思っているのだ。
とても苦しいが、今は兵士を信じて待つ。
どうもおかしい。祝賀の酒の中に眠り薬を入れられた形跡がある。
大臣の姿が見えないので、部下が困っている。報告をほとんど自分でさばかなくてはならない。忙しさがかえって救いになっている。