五月三日

テルパドールの宿屋にいる。
明日はアイシスさまに会うため、体の汚れを落としている。砂漠の国での風呂は 気持ちがいいが、次の日にはすぐ砂にまみれるので、さっぱりするのも城の中に いるあいだだけだろう。

つきることの無い泉に、アイシスさまの姿を思い出す。不思議な力を備えた美貌 の女性。
母さんは、あんな感じだろうか。

五月四日

我が息子。そして待ち望んでいた伝説の勇者。とうとう、という思いと、えっ、 という思いが交錯する。喜ぶべき事だけれど、複雑な心境だ。

天空のかぶとを手に入れ、はれて息子は勇者の再臨としてこの国に現れたわけだ。 国民の驚きは大変なもので、息子を一目見ようと、あわよくば御手をとれたらと、 大変な騒ぎだった。
息子の方は自覚しているのかいないのか、にこにこしている。娘が背中を叩いて「がんばりなさいよ」というと、ウンとばかりにうなずくのであった。

五月五日

女王に挨拶をして、テルパドールを辞す。
ルーラでグランバニアに戻ると、サンチョや兵士の交代要員と合流して、そのま ま北へ向かう。

母さんのふるさとのエルヘブンは極端な盆地で、地上からは人の足では行けない らしい。父さんの昔の頃の記録があればいいのだけれども。
どちらにしても北の大陸に渡らなくてはならない。


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