仕事が手につかない。心が別にあることをオジロンに見抜かれてしまった。
神殿の中で母さんの声が聞こえた。魔界に来てはならない、と。しかし、僕の心
は決まっている。魔界に行く。母さんを捜す。
だが、それでオジロンと大喧嘩をしてしまった。普段温和なオジロンとしてはめ
ずらしいくらいの口調だった。腹を立てている。
オジロンの気持ちも分かる。二代続けて国を空け、国民をないがしろにしてしま
った。グランバニア城からも人が去り、パパス王最盛期の影はない。
消えた妻を捜す、という旅は、ビアンカで完結して欲しいというのだろう。
だが幼い僕を連れ、無念のうちに死んだ父さんの気持ちが僕は痛いほど分かる。
逆にいえば、それを晴らさなければ、僕が完結できない。
オジロンには悪いが、僕は行く。