【第19話】
犯人は小林さんと真理の共犯だ
犯人は小林さんと真理の共犯だ。そうとしか考えられなかった。数々の事件も一人だったら不可能な犯行も、真理と小林さんが共犯なら可能だった。みどりさんの殺人も、真理が一緒にいる間は、小林さんが殺人をおかし、小林さんに不可能なときは真理が行える。そして何よりそれを証拠づけたのが、聖痕があるものがこの館に集められたということだ。聖痕を持っているものがほとんどが元シュプールの宿泊客、つまり「1年半前からこの殺人劇は仕組まれていた」ということだろう。なぜ、シュプールで聖痕持ち主を殺さなかったのかはわからない。しかし、夏美さんなど他に聖痕を持つものをそろったところで殺そうとしたのなら辻褄があう。部屋にいる時、ぼくと啓子ちゃんがいたから手出しはできなかったが、今、この場にいるのは小林さん、真理、そしてぼくだ。次の二人の獲物は・・・・・
ぼくは、徐々に真理と小林さんとの距離をあけた。この二人が悪魔に見えた。二人と一緒にいるのは危険だ。
そして一気に小林さんとの距離をつめるとぼくは小林さんに殴りかかり、鍵を奪った。みどりさんの死体をもぎとって館の鍵をがちゃがちゃあけた。
「と、透君?」
突然殴られた小林さんが驚いたようにぼくを見ていた。
ここで立ち止まったらぼくは殺される。扉の鍵があいた。ぼくは全力で外にかけだした。クルーザーまで逃げるんだ・・・・・・息がきれる。ぼくは三日月館を出て、森を走り、階段をかけおりた。
「はぁ・・・・はぁ・・・・」
なんとか海の方に出られそうだ。ここまで来れば二人とも追ってはこれないだろう。クルーザーのところまでいくと、無事香山さんのクルーザーがあった。操縦の仕方はわからないが、最新鋭のクルーザーだしなんとかなるだろ。ぼくはクルーザーを岸から離そうとした。
しかしなぜ、真理と小林さんは殺人をしようとしたのだ?その動機がわからない。それに・・・・落ち着いて考えると、俊夫さんを殺したのはどうなる?村上さん、みどりさん殺しは二人の共犯で可能だ。だが書庫にいったとき、真理も小林さんも一緒にいたはずだ。書庫にいく直前、俊夫さんが応接間で生きているのもこの目で確認している。つまり小林さんも真理にもアリバイがあるのだ。ぼくはそのことを忘れていた。
判断を誤ったのだ。二人は・・・・犯人ではないのだ。
ぼくは一度クルーザーを岸から離そうとしたが、二人が犯人ではないということがわかって再度館に戻ろうとした。ぼくは苦労して階段をまた登り、森をさまよった。そしてもう一回三日月館に来た。
しかし・・・・館の正門には・・・・
「ま・・・・・り・・・・・・・・」
真理が・・・・・真理であったものが・・・・
首、胴、腹、足が切断され、足首に杭を打ちこまれ血だらけになって殺されていた。信じられない光景。真理が・・・・・真理が・・・・・・
「ウワワァァァァァァ!!!!」
<終>
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