【第18話】
犯人は・・・
さらに5時間くらいたった。その間、ぼく達は一睡もしなかった。真理もぼくも目が真っ赤だった。しかし寝ればやられる、そういう脅迫概念もあって寝ることは許されなかった。
この部屋には窓がないから日があけたのかはわからない。だが、そろそろ朝の6時くらいで日があがってくるはずだ。
「真理、そろそろ日があけるころだ・・・小林さん達の部屋に行こう」
「うん・・・・」
真理は小さく肯き、ぼくの手を握った。啓子ちゃんは連れていこうか迷ったが、さすがに疲れたのか啓子ちゃんは今目をつぶって眠っている。啓子ちゃんの肩を揺り動かしたが啓子ちゃんは起きなかった。深い眠りなのだろう。もし目がさめて、正気に戻っていたら後で俊夫さんのことを聞いてみよう。鍵をしめても安全とは言えないが、ぼくと真理は部屋に鍵をしめて小林さんの部屋にいってノックをした。
「誰だ・・・・・」
しばらくしてドアの中から小林さんの低い声が聞こえた。
「透です。あと真理もいます。そろそろ日が上がってきたころだと思います。外を見てみませんか?」
そういうと、ドアの鍵がかちゃっと開く音がしてドアが開かれた。中には、キヨさんと香山さんの姿も見えた。よかった3人とも無事だった。
「そうだな・・・啓子ちゃんは?」
「部屋にいます。一応鍵はしめてありますが・・・」
「そうか、ではクルーザーを見に行こう。もし出発できそうだったら用意をして島から脱出しよう」
小林さんも目が赤かったが生きるという決意だけは鈍ってないようだった。
「キヨさんの足で、あそこまで往復するのは大変でしょう。一度、私と真理と透君でクルーザーを見てきます。香山さんはキヨさんと一緒にいてくださらないでしょうか」
小林さんが香山さんに頼んだ。
「わかったわい」
香山さんは短くそう答えた。
部屋の鍵を閉めたことを確かめると、ぼく達は薄暗い階段を下りていった。しかし・・・・・そこには信じられない光景が広がっていた。
「キャァア!!!」
真理の悲鳴が響き渡った。
正門の扉。そこに・・・・・みどりさんがいた。そしてみどりさんは、首、腹、足を切断され、手に杭をうちこまれ扉に張りつけにされていたのだ。ぼく達はみどりさんの代わり果てた姿を見て腰を抜かした。その場に崩れ落ちた。
な・・・なぜ・・・・・みどりさんが・・・・・みどりさんが、ここで殺されているのだ。我孫子氏で今までの殺人劇をしていたのではないのか。
どう考えても不可能な殺人・・・・・本当に神の裁きなのか。
もう・・・たくさんだ・・・・逃げたい・・・ここから逃げたい。どうしよもない絶望感がぼくを包んだ。
今まで殺人をおかしていたと思ったみどりさんの惨殺死体。今生き残っているのは、ぼくと真理、小林さん、香山さん、啓子ちゃん、キヨさんの6人だ。全員が部屋にいた。殺人が起こせるはずがないのだ。しかし人間が起こしたものであると考えるのであればこの中に犯人がいるとしか考えられない。
真理が殺人を起こすわけがない。ぼくは真理を信じている。それは小林さんだってそうだ。小林さんはシュプール以来ずっとお世話になっている。キヨさんもあのご老体で首を切り落とし、杭を打って壁に張りつけるのはたぶん無理だと思う。残りは香山さんか啓子ちゃんしかいないが、啓子ちゃんはずっとぼく達と一緒にいたし、香山さんも小林さん達と一緒にいたはずだ。もし本当に聖痕をもつものへの神の裁きであれば、危険なのは、ぼくと真理と啓子ちゃんだ。香山さんには聖痕があるかどうかは確認していない。小林さんとキヨさんは聖痕をもっていない。
しかし・・・・・何か・・・・・気になる。何か見落としている気がする。
頭の中でもやもやする。心臓が高鳴る。
ドキッ
何故聖痕のあるものを殺すのか?
ドキッ
安孫子氏とは誰なんだ?
ドキッ
何故犯人は首、胴、腹、足と切り落としたのか?
・・・・・・そのとき恐ろしい1つの考えが思い浮かんだ。
もし・・・・・かして・・・・これが聖痕をもつ者の裁きではなく、聖痕をもつものが、この館に集められたと考えたらどうだろう?そう考えるのが自然だ。この考えは何回も考えた。ぼくの心臓はさらにドキドキと高鳴った。
この館に集めたのは我孫子氏だ。なぜ、我孫子氏はここに聖痕をもつものを集めたのか。いや、それを言うなら半分以上のメンバーが1年半前にシュプールに宿泊した客であり偶然聖痕のあるものだというのか?そんなことが偶然でありえるだろうか。それと被害者は必ず首、肩、胴、足が切り落とされていた。
!?
もしや・・・・・いや、きっとそうだ。今までもやもやしていたものが・・・・・・一本の糸につながった。これは・・・神の裁きじゃない。ぼくの考えが正しければこれは人が起こした大量殺人だ。
この殺人劇が一年半前から計画されていたとしたら・・・・その・・・・・犯行が行えた人物・・・・それはアイツだ。
●選択肢
(1)
犯人は香山さんだ
(2)
犯人は小林さんと真理の共犯だ
(3)
犯人は啓子ちゃんだ
(4)
まだこの場では断定できない
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