【第20話】
犯人は・・・
ぼくは森を越え、海岸に出てきた。三日月島の端っこだ。まず、香山さんのクルーザーを見に行った。香山さんのクルーザーは暴風雨で多少の損傷はあったようだが、動作には影響ないように思えた。船の動かし方はわからないがスイッチらしいところを押すとちゃんとクルーザーのエンジンが動いた。 あとは・・・・もう1つの殺人を犯した者の動かぬ証拠を探すのみだ。ぼくは香山さんのクルーザーから少し離れて海岸沿いに歩いた。香山さんと小林さんが船を固定するときにぼくと真理が歩いていた猫のジェニーもどきがいた海岸だ。そしてジェニーもどきがいた岩影を見た。 そこには一本のマニキュアが落ちていた。そのマニキュアをあけてみた。マニキュアの色は緑色だった。「やはり・・・・・・・」 ぼくは自分の推理が正しいことを確信した。あと、もう1つ、大切な証拠を見つかなければいけない。その動かぬ証拠を見つければ、すべての犯行が行えてる人物は一人に絞られる。その証拠は三日月館にあるはずだ。ぼくは館に戻った。 館に戻り正門をあけると、むせかえるような血の臭いがただよった。目の前にみどりさんの生首死体が今も置いてある。そのときニ階の方から、しくしくと泣き声が聞こえる。 ・・・・・真理?真理の声だ。 ぼくはニ階に全力でかけあがった。そこには、真理と小林さんの二人の姿、それと・・・・「くそ!」 新たな犠牲者が出ていた。体と足だけの死体・・・・この体格からして啓子ちゃんだ。啓子ちゃんの首が切り落とされ、手にはまた杭がうちこまれていた。「もう・・・・いや・・・・これ以上人が死ぬのはいや・・・・」 真理がぼろぼろと涙を流す。「ほんとうに神の裁きなのか・・・・・」 小林さんはうつろな目で啓子ちゃんの死体を見てつぶやいた。遅かった・・・・またあらたな犠牲者が出てしまった。ぼく達が館の正門の鍵をあけている間に、二階で啓子ちゃんがいた扉の鍵をあけ、殺した者がいたのだ。ぼくは犯人の残虐さに恐怖より怒りを感じた。 ・・・・これは神の裁きじゃない。殺人だ。犯人は何人血祭りにあげれば気がすむんだ・・・ ぼくは静かに真理に近づいた。ぴくっとして見上げる真理。「透?啓子ちゃんが・・・また・・・・・また・・・・人が死んだの・・・・私、気が狂いそう・・・・うっ・・・うっ・・・・」 ぼくは無言で真理を抱きしめた。真理だけは・・・・真理だけはぼくが守ってみせる。ぼくは真理のぬくもりを感じながら、自分の心に誓った。「真理・・・小林さん、ここは危険ですから、部屋に戻ってください」 ぼくは落ち着いた口調で二人にはなしかけた。「キヨさんと香山さんは?」「キヨさんは今は私達と一緒の部屋にいる。この場を見せるのは忍びないからな・・・・香山さんは、一人で今自分の部屋にいるわ。一人になりたいからって、そう言って・・・・」「そうか。二人は部屋に戻って何があっても、部屋の鍵をあけないでください。お願いします」 ぼくは小林さんにそう頼んだ。「透君・・・・君は・・・・・」「これは、神の裁きではありません。殺人です。犯人が・・・・わかりました」「ほんとう・・・・か」 小林さんの目にはその言葉をきいても希望の光などがなかった。ただそこにあるのは、たくさんの惨殺死体の現実だけ。「はい、まだ確信まではいきません。しかし今からその証拠を見つけます。すぐに戻ってきますので二人は部屋にいてください」「・・・・わかった」 小林さんは深くうなずいた。「・・・さぁ、真理も」「・・・うん・・・・・透、気をつけて・・・・」 小林さんと真理は部屋に戻っていった。廊下には、首が切られ血をぶちまけている啓子ちゃんの死体しかなかった。香山さんは部屋から出てきていない。 啓子ちゃんが今死んだということは、犯人はすぐそばにいるということだ。聖痕をもつものは、残りはぼくと真理だけ。必ず、犯人はどっちかを狙ってくるはずだ。 真理には危険を絶対近づけさせたくない。小林さんと一緒に部屋にとじこもっている限り、たぶん大丈夫だろう。犯人はぼくを狙ってくるはずだ。 ぼくは最後の動かぬ証拠を見つけるために立ち上がった。犯人は・・・・たぶん、アイツなのだから・・・・ ●選択肢(1)犯人は香山さんだ(2)犯人はみどりさんだ(3)犯人は可菜子ちゃんだ(4)犯人は夏美さんだ
第21話 (執筆完了)
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