【第6話】
アニマルゾンビ
孤児院を出た俺たち。
少しでも早く城や街を見たいため俺たちは夜道を休まず歩いた。不安もあったが、それ以上に期待が大きかった。俺たちはこれからある新しい世界に胸を躍らせた。
しかし6歳の子供二人が、夜道を歩くことがどれだけ危険なことを俺たちはまだこのとき知らなかった。
大人達が俺達を追うとは思わなかったが俺たちは夜のうちにできるだけ孤児院から離れようと夜通し歩こうとした。小一時間ほど歩いたところ
”グゲェ・・・・・”
俺たちが歩いていると、不気味な声が聞こえてきた。
「おい、リュック、変な声出すなよ」
「ぼ、ボクじゃないよ・・・・」
「ん?
じゃぁ、誰が・・・・・」
”グゲゲェェ・・・・・”
今度は背後からはっきりと聞こえてきた。
俺たちは恐る恐る振り返ると、そこには、目玉が飛び出し、腹からは骨が見え、内臓がはみ出している青色の犬の姿があった。
「る、ルーニ・・・・」
「わかってる・・・・」
リュックはぶるぶる震えている。
犬のようだが、凝視できないような化け物だ。こいつが・・・・魔物ってやつか・・・・
どうする・・・逃げるか?しかしすんなりと逃してくれるとは思えねぇ。それに群れならどうにもならないかもしれないが、幸いにも一匹だけだ。
俺は意を決意して、銅の剣を抜き放った。
「戦うぞ」
「え、えぇ!?」
リュックは信じられない様子で俺の顔を見た。
「なんだよ。
おまえの足でこいつから逃げられるのか?
それにこのまま食われてぇのか」
「わ、わかったよ・・・」
リュックも聖なるナイフを手に持った。その手が震えている。
こりゃ、使い物にならねぇ・・・
俺は一人で戦う決心をした。
剣など使ったこともあるわけなく構え方もわからなかった。だから俺は、銅の剣を前に突き出し犬の化け物を近づけさせないことにするのが精一杯だった。
化け物は最初剣を警戒していたがしばらくすると俺の頭上にとびかかってきた。
「くそったれ!」
俺は無我夢中で剣を上に突き出した。
”グギャャャャ!!!”
俺の銅の剣は化け物の腹にささった。はみ出している腐った内臓が飛びちる。
「き、気持ちわりぃ~!!!」
俺は串刺しにした銅の剣を横に振り下ろした。化け物は剣からスポっと抜け出しそのまま地面にたたきつけられる。
化け物はぴくぴくと動いていたが、しばらくすると動かなくなった。
汗がたらりと落ちる。わけがわからなかったがどうにか助かったようだ。
それにしても・・・・うぅ・・・・吐き気がする・・・・いくら空腹でも、目の前であんなものを見せられたら今は飯食えねぇ・・・
俺がゆっくり首を後ろに向けるとリュックがへなへなと座り込んでいた。
第7話 勇気
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