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+--第9話 憎む心--+
お母さんのドラゴンを殺したのは 二人の戦士だった。 許せない・・・・ 一度死んでしまった人が生き返らないのはわかる。 私はその戦士に自分の気持ちを思いっきりぶつけた。
「お母さんを返して・・・・・・
返して・・・・返して!返して!!!!」
私は目の前の戦士に心から湧き上がる怒りをぶつけ、 そしてうったえた。
「まさか・・・
君のお母さんを殺してしまうことになるとは・・・」
「どうやらバロン陛下はこの村の召喚師を
全滅させるために俺たちをここまで・・・」
二人の戦士は戸惑っていた。
「なんてことだ・・・・・」
「かわいそうだが・・・・
召喚師の力をもつ可能性があるこの子も
殺らなければいけないようだな・・・」
竜の形をした兜をかぶっている戦士のほうが、そのようなことを口にした。 私はぴくっとした。 そして震える。 私も殺される・・・・
怖かった。自分が殺されるということが。 でも、殺されるということの実感もなかった。 死というものが幼かった私には理解できなかった。 お母さんを失った悲しみがあまりに大きかった。
・・・・・もう自分がどうなろうと・・・・もうどうでもいい・・・ そうとも思った。
お母さんが殺されて生きていても仕方ない。 もう何も考えたくない。
「カイン!
まだ子供だぞ!」
「だが、やらねば俺たちがやられる!
陛下に逆らえるか?」
二人の男の争いの声が聞こえる。
「こんな殺戮を繰り返してまで
陛下に従う気はない!」
黒い甲冑の戦士はそう言い放つ。 二人の戦士はそのあと、無言でにらみ合っていた。
「ふぅ・・・・まぁ、おまえのことだ・・・・・そういうとは思ったぜ。
一人でバロンを抜けさせるなんてさせやしない。
いくら陛下に恩があるといっても俺も竜騎士の名に恥じる真似をできるわけなかろう」
竜の兜をかぶったカインと呼ばれた戦士が、もう一人の男から視線をはずした。
「カイン、おまえも・・・・・
わかった。
それよりこの子はどうする?」
「俺たちが連れていくしかあるまい」
そういって二人の戦士が私に近づいてきた。
戦士は誰かの命令でこの村にきたようだった。 話を聞いていてそれはわかった。 しかしそんなことはどうでもよかった。
私にとって目の前の戦士はお母さんを殺した人にすぎない。
「いや!
近寄らないで!」
「しかし・・・ここは危険だ・・・・」
「もうイヤ!
みんなイヤ!!
大嫌い!」
私の中で何かが壊れたような気がした。
・第10話 「破壊神タイタン」
・第8話 「二人の戦士」に戻ります
・小説目次に戻ります
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