【第168話】

流産


何も言えなかった。

私は、てっきり子供が産まれたのだと思っていた。

流産・・・・・・

妊娠7ヶ月以内に・・・・・胎児がお腹の中で死んでしまったっていうことだ・・・・・・


「原因はわからん・・・・

 だが・・・・・・

 すべてを失った気分だった・・・・

 希望という心を。

 絶望しか残らなかった。

 

 唯一の希望・・・・・・それを失った・・・・・・

 何も・・・考えられなかった・・・・・考えたくなかった・・・・・・・

 

 子供が死んでいたことを知ったのは、部隊で戦っていたときに

 知らせとして伝えられた。

 

 すぐに・・・・・・妻の所に帰りたかった・・・・・

 が、それは許されなかった。

 

 部隊を離れたのは、それから3日後だった。

 

 妻はやせ細っていた。

 子供が・・・・死んでいたと知って、体が食事をうけつけなくなっていた。

 それほど衰弱していた。

 

 そして、妻は私の姿を見ると泣きじゃくった。

 儂は・・・・・・抱きしめてやることしかできなかった。

 

 そして・・・・・もうその場に、子供はいなかった。

 腐って・・・・・しまうから・・・・

 

 子供は、取り上げられた産婆が遠くに持っていき、

 今夜、火葬することになっていた。

 

 自分の子供を一度も見ることなく・・・・・別れることに・・・・・」


第169話 妻の想い

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