【第169話】

妻の想い


生きる権利どころか

生まれることができないなんて・・・・

 

そして、荒れ狂う戦いの中、唯一の光を失った

ホビット夫婦の悲しみは、私にはきっと想像できないものだと思う・・・・・・

 

「今でも思い出すな・・・・・・・

 あのときの出来事を・・・・・・・・

 儂らは夕方まで話し合った・・・・・・・・」


「・・・・・・あなた・・・・・・・行って・・・・あげて・・・・・・」

 

「しかし・・・・・おまえをほっておいては・・・・

 いけない・・・・・・

 もし、私がいない間にここに攻め込まれてしまったら・・・・・・」

 

私は・・・・・こいつをおいていけない・・・・・

今にも、魔王軍の総攻撃がはじまろうとしている。

いつ・・・・襲われるかわからないのだ・・・・・

 

「いいの・・・・・わたしのことは・・・・・」

 

「いいわけ、ないじゃないか!

 ・・・・・・・・子供を失い・・・・・・

 私には・・・・・・・おまえしか残っていない・・・・

 おまえを失うわけには・・・・絶対に・・・・・・いかないんだ・・・・・・・」

 

「お願いだから・・・・・あなた、行ってあげて!

 

 私には・・・・・もう・・・・子供を見送る体力がありません・・・・・

 だけれど・・・・私たちは・・・・・あの子の親です。

 最後まで・・・・・・・・最後まで・・・・

 あの子のことを・・・・・・・・・見届ける義務が・・・・あるのよ・・・・・」

 

愛する妻は、とぎれとぎれに、泣きながらそういった。

 

そうだ・・・・・・・・・私は・・・・・・私達は・・・・

まだ、あの子の親だ・・・・・・

親のつとめを放棄するところだった。

 

最後まで、自分の子供を見届けなければいけない・・・・・

・・・・私は・・・・・・妻の願いをもとに・・・・・・

火葬場へ向かった。


第170話 初めての涙

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