【第170話】
初めての涙
荒れ狂う戦争。
妻のやせ細った顔。
子供も失い・・・・・・・・
私は何のために生きているのだろう・・・・・・
何も考えたくなかった。
すべてから・・・・・・・逃げたかった・・・・・
だが、親として・・・・・子供の最後を・・・・・見届けなければいけない。
これだけは・・・・・・・逃げてはいけない・・・・・・・
何も考えたくなかったが・・・・・
火葬場につくまでにいろいろ考えた。
我々はなんのために戦っているのだろう・・・・・
子供を持つと言うことはどういうことなのだろう・・・・・
結論が出るわけではない。
だが、考えられずにはいられなかった。
私はここで死ぬわけにはいかない。
妻を守るためには
悲しみを乗り越え、戦わなければいけない。
そのために、考えなければいけなかった。
平和を取り戻すために戦っているのか?
それもある・・・・・・
が、私はそれほど立派ではない。
同族を守るために私は戦っているのだろうか?
それとも、妻を守るためか?
今ではそれも冷静に考えられないくらい・・・・・・・・・・疲れてしまっている。
一度も子供の顔を見ることができなかったが、
子供を一瞬でももったという実感はあった。
生まれてくれさえすれば・・・・・・・
苦労はするだろうが、何にも引き替えることができない
大事な物を手に入れることができる。
妻との想い出・・・・・・
雨が降っている。
今、私は子供を抱いている。
はじめて・・・・・見る・・・・・・自分の子供。
冷たい・・・・・・
雨の中にぬれる子供は、ぬくもりを感じなかった・・・・・
目もあいていない。ただ、眠るように・・・・静かに・・・・
涙が・・・・・あふれてくる・・・・・止まらない・・・・・・
私が今までに涙を流したことは記憶になかった。
この場に妻がいなかったのが、せめてもの救いだった。
思いっきり私は天に向かって叫んだ!
第171話 最後の別れ
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