【第172話】

返事のない部屋


子供の最後を見届けた私は、

子供と一緒に・・・・・妻のところに・・・・帰ることにした。

魔王軍の総攻撃があるかもしれない。

せめて、妻だけは守らなければいけない。

 

急いで戻ることにした。


どうやら、まだ総攻撃はなかったようだ。

無事、家も残っていた。

私は家の中に入る。

 

「今・・・・・・戻った・・・・・・」

 

妻にこの布を見せるのはつらいが、

あいつにもこの現実からは逃れて欲しくない。

受け入れがたい現実だが・・・・

一緒に・・・・・乗り越えていきたい。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

声が返ってこない。

どういうことだ?


妻は・・・・・・部屋で静かに眠っていた。

そして・・・・・・・もう・・・・・・・・永遠に目覚めることはないだろう・・・・・・

 

どうやら、あれ以来、食べ物も口にできず・・・・・・

 

私も苦しかった。

しかし、自分の身を痛めてまで生む、妻にはもっとつらかっただろう・・・・

きっと私が想像できなかったくらい・・・・・つらかったのだろう・・・・

 

生きる気力もすべて・・・・失い・・・・・・

 

それを察するこることができなかった・・・・・・・

私はなんて、愚かなんだ・・・・・・・・・


「もう・・・・・・・遠い・・・・・昔の・・・・話じゃ・・・・・」

 

私は何も言ってあげられなかった。

涙がぼろぼろでて止まらなかった・・・・・・

ただ、黙ってホビットさんの言う話しを聞いてあげた。

それしか私にはできなかった・・・・・

声をかけることさえ・・・・・できなかった・・・・

 

「そのあと、魔王軍は総攻撃をしはじめる。

 どうにか、竜の神のお力により、この世界だけはかろうじて

 守られることができた。

 

 だが、多くの犠牲もでた。

 その中でホビットの一族は儂を含める数人しかいない。

 儂らは、竜の女王様に仕えることになった。

 

 竜の女王様は、心を読むお力をもっていらっしゃった。

 そして、儂の気持ちをさっして・・・・・くださった・・・・・

 

 だから、儂は、なんとしても、あの方がお生みになられた卵は

 かえさなければいけないんじゃ・・・・

 もう・・・・・あの悲しみは味わいたくないからな・・・・・・・

 

 ・・・・・・年寄りの話はこれで終わりじゃ。

 さぁ・・・・・・早く・・・・立ち去れ・・・・・」


私は何も言わず、立ち去ることにした。

だって・・・・・・何もいえないもん・・・・・・

 

何を言ったって、同情めいたことになってしまう・・・・・・

 

一つの命が生まれる、消える。

それは、どういうことを表すのか・・・・・・・・・

おぼろげながら、自分の中でそれがわかってきた気がした・・・・・


恒例のあとがきです。

15万人記念に書くはずだったチェルトのばしのばしになってしまって、すいませんでした。

もうすぐ、20万人だというのに・・・・

今回のテーマは「子供への想い」です。

今まで、私が一番納得して書けたと思った作品は

不死鳥ラーミアでの、巫女の死で、 チェルトが死への恐怖を乗り越えるところで

本当の勇者に育つというというところ以外 納得できなかったのですが

(人間の生死について、深く考えてもらいたかった作品)

今回の作品は、あの作品以来、1年ぶりに、

自分の納得のいった、満足のいった、作品が書けたと思います。

いろんな・・・・・想いをこめて書いたつもりです。

 

文字通り、生死の問題。

戦争は、人にどのような影響を及ぼしてきたか。

子供への愛情。 妻への愛情。

 

初めて、主人公のチェルトとは別の人物に 焦点を当て、

そのキャラをチェルトと同様

一人称で物語を書くという手法を試みてみました。

途中で、一人称の対象をチェルトからホビットに変える

微妙なタイミングがなかなか難しかったです。 (第169話)

ホビットの自分のことを”儂”(現在)と過去の思い出のシーンの”私” などの

一人称の使い分け等にも注目して欲しいです。

(「」内の会話以外で”私”と自分のことを読んでいるところは、

 ホビットに主人公が変更されたところです)

この納得のいく作品を書くのに 3ヶ月以上、かかってしまいました。

ですが、それだけ時間をかけたかいがあって、

ようやく納得のいく作品を描けたことに 自分ではほっとしています。

 

人の愛情とは?

争いは何を生み出すのか?

子供をもつということは、どういうことを意味するのか?

親が子供を愛するとはどのようなことなのか?

本来、親の方が早く死んでしまって、

あとになって子供が親の大切さっていうのが わかると思うんですが、

それを子供が先に死んでしまうと言う設定で

親がいかに子供のことを想っているのかということを書いてみました

 

他にも感じることはいろいろあったはずです。

これを読んで、男性も女性も いろいろ、考えてもらえたらな・・・・と思います。

読んでなにか感じた人は、掲示板メールで感想をくださいね。


それにしても、ドラゴンクエスト3とはどんどん関係のない話しになってきましたね。

バラモスを倒したのが第105話だから

それからアレフガルドに行くまでに70話近く書いてしまったということですか(汗)

さて、次回から、今度こそ、アレフガルド突入です。

もうこのチェルトの冒険も連載2年立ちましたが いつまで続くのかなぁ・・・

あと、何百話書くことになるのかなぁ・・・

一応、300話位を目処に終わればいいなって思ってはいます。

(しかし、このペースじゃ300話では終わらないでしょう(笑))


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