【第178話】

格安宿


ラダトームに来た私は、まず宿を探すことにした。

さきに、買い物をしてもよかったのだが、

アリアハンを出てからそれほど時間もたっていないし、

食糧や薬草の方もまだ充分にあるので買う必要はないだろう。



「2G!?」


「はい、そうです」


「え、ええと・・・・・そんなに安く泊まって良いんですか?」


「えぇ、かまいませんよ」


「ほんとに、ほんとぉ~に、いいんですか?」


「えぇ、本当です」


「ほんとの、ほんとの、ほんとぉ~に、いいんですか?」


「えぇ、ですからかまいません」

 

ラダトームの城下町にある宿に泊まろうと思ったのだが

よくこれだけ安い値段で,宿の運営ができると思うくらい、

破格の値段で泊まることができたのだ。



私は疑いながらも、部屋をとって

武装解除をしたあとギアガの大穴下りと船こぎで、

汗をかいていたので、お風呂で汗を流した後、

こざっぱりした格好に着替えた。


「う~ん・・・・・・結構良い宿なのに

 なんで、こんなに安いんだろう。

 あとで、ふっかけられたりしたら嫌だなぁ・・・・・」


別にお金はあるんだけれど、裏に何かがあるのか

ちょっと不安になったので宿のご主人に

お話を聞くことにした。


「え?宿代が安い理由?」


「はい・・・・」


「う~ん・・・・・・・

 まぁ、こんな時代にお金儲けなんてしてもしょうがないからね。

 いつ世の中、滅びるかわからないんだし。

 大魔王が明日にでも、世界を滅ぼすかもしれない。

 不安で仕方ない毎日だ。

 きっと私だけじゃないだろう。

 だったら、お客さんに、少しでも喜んでもらおうと思って。

 もう、ほとんどボランティアみたいなもんだけれどね」


大魔王の存在は、本当に人々に苦しみを与えているんだ。

もう苦しみというより、絶望を通り過ぎて

あきらめという気持ちかもしれない。

その心は賛成しがたいけれど

でも、このご主人の人柄が大変いい人だと思った。

私はそのご主人の人柄に感動した。


「そうだったんですか・・・・・」


「っと、年頃のお嬢ちゃんには

 こんな話はしないほうがよかったかな」


どういう意味でいったのかは読みとれなかったが

たぶん、これから先、楽しい年頃なのに、

それが楽しめるかわからないという意味でいったのだと思う。


私は部屋に戻った後、ベットに横になり、

天井を見上げ、ぼぉ~っとした。


これから、私は、神竜や竜の女王様を封じ込めた

神の力に匹敵するかもしれないゾーマと対決しなければいけない。


ゾーマってどのくらい強いんだろう・・・・

その全貌が闇に包まれている中、

まったくこれから敵対するものが実感がわかなかった。


ただ、実感したのは、アリアハンの宴の席で

何人物人を殺した、あの稲光と

ゾーマの地の底から響く不気味な声は忘れられない。


ベットに横たわりながら、窓から景色を見ていた。

辺りは真っ暗だった。

今は夜なんだな・・・・・・・

夜にしては、ずいぶん、街は賑やかだったけれど。


しかし、このアレフガルドがゾーマの巨大な魔力で

太陽の力を消し去り、朝が来ないと知ったのは

後のことだった。


第179話 ちょっとした感傷

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