【第292話】
賢者の石
目の前にいる竜神は実体なき思念だった。自分の魂を私に与えることにより私はドラゴンに変身する力を手にする。しかしそれは竜神の思念や魂も消すことを意味していた。
「このきれいな石は・・・・・」
「賢者の石といいます。
純度の高い魔石に伝説の防具の鎧にも使われている
ブルーメタルという金属を掛け合わせて作った石です。
すばらしく強度と魔力を持ったこの石で
使うものの傷を癒すことができます」
「高い魔力を封じこめた魔石か・・・・」
「この石はある勇者に手渡そうとしたものでした。
その方も大魔王ゾーマを倒そうとアレフガルドを旅しています。
その方の手助けとなればと思い、私はこの場でその者を待っていました。
その方はすでに大魔王ゾーマの結界である
闇の羽衣を取り除く手段を得ています」
そのような凄腕の勇者がいるとは心強い。
「わかった・・・・ その者にこの石を手渡せばいいのだな。 まだあなたの力を受け入れる決心はつかないが・・・・ して、その勇者の名は?」
竜神はちょっとためらったが、そのあと意を決意した表情で私に言った。
「勇者チェルト・フレイユです」
私はその答えを聞いて心臓が飛び出すほどびっくりした。
「そうです・・・・・あなたの娘さんです」
「な、なぜ・・・・・チェルトが・・・・・」
あまりの衝撃の一言に私の思考回路は停止した。どんなことでも動じることはないと思ったが今回は違った。
「なぜ・・・・・」
娘の名前を彼女が知っていること、娘がアレフガルドにいること、私は驚きのあまりそれしか言えなかった。
第293話 一粒の涙
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