【第293話】
一粒の涙
アレフガルドに娘がいる。驚愕の事実を知った。なぜ娘がここに・・・・・・・
「勇者チェルトはあなたの夢を引き継ぐため
魔王バラモスを倒すため旅に出ました。
そして苦難を乗り越えながらたった一人で魔王を倒しました」
「それは本当・・・・・・か?」
嘘を竜神が言わないことくらいわかっている。しかしそれでもそう尋ねずにはいられなかった。信じ難い内容だった。
娘がアレフガルドにいたことも驚きながらたった一人であの魔王を倒してしまうということも信じられなかった。目の前の女性が嘘を言っていないことくらいはわかる。しかしすぐには信じろと言われても無理な話しだった。それほど竜神の話しに驚かされた。
「えぇ、本当です。
チェルトさんにもお会いしました。
しかしゾーマの配下魔王バラモスを倒したことを知り
大魔王ゾーマはチェルトさんの存在も知ることになります。
それがどういう意味か・・・・わかりますよね」
無論わかる。力のあるものは排除するため大魔王は刺客をおくりこむだろう。娘を殺すために。
なんということだ・・・・・
たった一人で娘が戦ってきた。その事実を信じることが難しかった。
妻に、娘に、平和な世界を見せるため安心して暮らしていける世界を見せるため私は戦ってきたのだそれがこういうことになるとは・・・
私が不甲斐ないばかりに・・・・娘になんと申し訳ないことをしたのだろう。
娘よ・・・・私は逆におまえにつらい思いをさせていたのか・・・・・・つらい戦いだっただろう。お前はいつから一人で戦い始めたのだ。剣の持ち方はいつ覚えたのだ。
魔王を倒す・・・五体満足で生きているかもわからぬ激戦をおまえは一人で続けてきたのか。
いつ死ぬかわからぬ戦いをたった一人で。チェルトよ・・・・お前は私の娘というだけでその人生を歩む他なかったのだろうか。
すまぬ・・・・
私は、竜神がいるのもかまわずその場で泣き崩れた。娘に過酷な運命を背負わしたことに。娘よ・・・・・すまぬ・・・・・・
第294話 決心
前ページ:第292話 「賢者の石」に戻ります
目次に戻ります
ドラゴンクエスト 小説 パステル・ミディリンのTopに戻ります