【第304話】
雷神の鎧
ラダトームに戻った私は王から軍船の一隻を借りうけた。一隻には100人、計600人とルビスの塔を目指す。まずは海の魔王の下調べだ。海の魔王のその正体は知られてない。軍船にすべての荷も詰めあとは出発するのみだ。
私は旅立ちの前に王に呼ばれた。そこには、一着の黒い鎧があった。
「何も言わずに受け取るがいい」
「これは?」
「お主への選別じゃ。
今装備している鎧、さぞかしすばらしい鎧であったのだろう。
しかし、今お主が持っている王者の剣、勇者の盾にはやや不釣りあいかと思うぞ」
私は自分の着ている鎧を見てみると、確かにぼろぼろだった。ランシールの洞窟で大地の鎧を見つけて以来、ずっと身に着けていた。ネクロゴンドで一度刃の鎧を着用したものの、バラモス戦で大破してその後、サラマンダーやメルキド大戦でのキングヒドラなど激戦をこの鎧と共にしてきたのだ。
とくに、キングヒドラとの戦いでは、致命傷の傷を受け、魔法で体は回復したものの
鎧はあちこちに穴があき、鎧としての効果がほとんどしていなかった。メルキドで鎧の下に着込んでいる旅人の服と上に羽織るマントは新しく購入したのだが、鎧は気に入ったものが手に入らずそのままでいたのだ。
「雷神の鎧というものだ。
伝説の光の鎧には及ばないだろうが、これでも古代遺産のうちの1つだ。
きっとお主の役に立つだろう」
漆黒の鎧に黄色い線が入っている。名前のとおり雷を象ったものなのかもしれない。見た目が黒い鎧のため、魔の力が強い不気味な鎧にも感じたが呪われてはいないだろう。王の好意をうけとることにした。
「ありがとうございます。 ありがたく使わせていただきます」
私はその鎧を頂いて、ボロボロの大地の鎧をはずし新しい鎧をさっそく身に着けてみた。
「おぉ、よく似あうではないか。
勇者殿にぴったりだな。
これなら大魔王にも勝てそうな気がするぞ」
王はそう言うと豪快に笑った。新しい鎧は体にぴったり吸いつくかのように合った。
「思ったより軽いですね」
私は鎧をつけて腕を曲げたり、片足を軸にして体を半回転させたり剣技の基本となる動作をして動きを確かめた。
「鎧に軽量化の魔法がかけられているのだ」
市販で売られているプレストアーマーなどはそのまま金属を鍛えられたものが使われていることが多いが一流の鎧は動きを妨げないように、たいてい軽量化の魔法がかけられている。大地の鎧や刃の鎧にも軽量化の魔法はかけられていたようだが、さらに身が軽くなったようだ。これなら今までの動きも損なわれない。
「伝説の魔剣、雷神の剣とついになる鎧でな。
剣の行方はわからんのだが、鎧はラダトームの国宝の1つとして
残っていたのだ」
雷神の剣、たしかカンダタが持っていた剣だ。メルキド大戦時、数十体の魔物を一瞬で焼き払った魔剣でその威力は稲妻の剣を上回るかもしれない。私もあの剣に救われた。今はカンダタと共にあるはずだ。そういえば、カンダタはあの剣をどこで手にいれたのだろう。
「ありがとうございます、これからの戦いにきっと役立ちます」
私は王に礼を言い、軍船に乗りこんだ。
第305話 聖域魔法トヘロス
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