【第310話】
津波
順調に船旅をしていたが海の生物がまったくいないことに気がついた。そして私達の目の前に赤黒い島が現れた。不気味である。穏やかだった波が次第に大きくなってきた。
「みんな、しっかりつかまれ!!!」
船長の掛け声が響き渡った。船員達は船縁に捕まる。
「いよいよ・・・・・海の魔王がおでましか?」
船長は舵を切りながら、つぶやく。
いったい、どこからくる?あの島は魔の力を感じる。島から海の魔王があらわれるのか?それとも数にものを言わせて、複数の魔物が襲ってくる?
私はいつでも剣を抜けるように稲妻の剣に手をかけた。王者の剣もあるが、まだ使ったことがないため使いなれた剣の方がしっくりくる。
すると目の前の赤黒い島は突如盛り上がり、大きな波は津波と思われるくらいの波になった。
「ウワァ!!!!!」
パニックする船員達。私も船から振り落とされないように必死に船につかまった。
三隻の船は激しく揺れ、帆を支える柱にひびが入った。だが、津波ほど大きい波をうけながらも船は転覆することがなく立て直した。
「ラダトーム一の軍船がこのくらいで沈んでたまるか!!!」
船長は怒鳴りながら舵をにぎっていた。
島はさらに盛り上がり、津波の第二波が来た。海水は船を何度もうち、甲板は水びだしになる。何人かは船の外に投げ出され悲鳴をあげながら、戦士達は黒い海にのみこまれた。助けようとしたが、自分が振り落とされないようにするのが精一杯だった。
さらに非情にも第三波の津波が来た。その波でさきほどひびが入った帆はメキメキと、ものすごい激音を放ち、完全に折れた。
続いて第四波の津波でその折れた巨大な帆も柱ごと海に消えた。私達はただ船にしがみつくことしかできなかった。
しかしさすがラダトーム一の軍船。四度の津波を受けても一隻も船は転覆はしなかった。
「みんな落ち着いて!!!」
私は精一杯声をあげた。しかしその声を聞くものはいない。それほどその場は混乱していた。
甲板からは絶叫、悲鳴がやまない。しかしその声が一瞬静かになった。皆が一つの方向を見ていた。島が盛り上がった方向である。
そして私もそっちを見た。目の前の光景を見て、声がでなかった。あまりの出来事で誰もがこれ以上声を出すことができなかった。
そ、そんな・・・・・こんなものが世の中に存在するはずがない・・・・・
第311話 逃げ
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