【第332話】
ラゴンヌ戦
二十体近くの魔物がいた部屋の左右に扉があった。右側からはかすかに、なにか軋むような物音がした。私は今いる部屋に松明を固定し、もう一本の松明に火を消して右側の扉を開けた。
扉をあけると、やはり暗闇だった。
しかしぼんやりと松明の明かりに照らされたものは・・・大量の死体だった。ある者は、足がなく、ある者は頭がなく腹を食いちぎられて内臓がはみだしている死体もある。そして部屋の真中には一匹の獣が私をにらみつけていた。ネクロゴンドの洞窟で戦ったライオンヘッドに似ていたがさらに一回り大きく、灰色の毛をしていた。足は六本足だ。一歩私のほうに歩みよると床が軋むような音がした。
「やはり魔物・・・・」
私は松明を持ちながら後退した。元いた松明を灯した部屋におびき寄せる。たった一匹でこれだけの冒険者を倒したのだからかなり強いのだろう。強い魔物が持つ独特の威圧感がある。
巨大な獣は徐々に私に近づいてきた。そして咆哮をあげると跳躍して私に襲いかかってきた。私は松明を投げ捨て稲妻の剣を抜く。投げ出された松明は火の粉を散らしながら、床に落ちる。
魔物は強靭な前足を振るってきた。勇者の盾で防いでも力負けして吹き飛ばされる可能性があるため私は紙一重で攻撃を交わす。すれ違いざまにカウンターで稲妻の剣を振るい、その足を切り落とした。
”グワァァァァァァ”
絶叫をあげる魔物は、そこから飛び離れた。
逃さないっ!!!私は追撃をかけるため魔物の動きを先読みし着地ポイントに素早く剣で突きをいれた。
狙いは違わず剣は魔物の脇腹に吸いこまれ、魔物の絶叫が再度部屋に響き渡る。トドメをさそうと心臓に三撃目の突きをいれようとすると魔物の強靱な腕が振るわれた。私の頭部にこのままだと直撃する。かわしきれない!?私はとっさに頭を右に振った。魔物の腕は鎧の肩当てに直撃し、雷神の鎧の肩当てが吹き飛んだ。肩からは血が飛び散る。私は苦痛に顔をゆがめながらその場から離れる。
危なかった・・・・・なんて力なの・・・もし頭部に直撃していたら、私の頭は粉砕されていた。そして雷神の鎧でなければ、私の肩も出血だけではすまなかっただろう。腕がもぎ取られていたかもしれない。
私は肩の傷を押さえながら、魔物をにらんだ。
「簡単には勝たせてくれないわね・・・・」
すると獣が咆哮をあげ、目が光った。周囲の気温が急に下がりだした。
これは・・・・・・
第333話 ラゴンヌ戦2
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