【第335話】
盗賊の技術
肩からの出血がひどく、傷は魔法で回復させたがしばらく休むことにした。痛み止めの薬草を飲んで体力が回復するのを待つ。
30分ほど休んだだろうか。左手の感覚も戻って盾を握ることができた。まだ痛みは残るが、我慢できないことはない。左手に力は入る。薬草の効果が現れたのだろう。私は立ちあがり、先に進むことにした。
この部屋にはまた一つの扉があった。一部屋目が魔物が20匹以上いた部屋二部屋目がマヒャドを唱えたライオン型の魔物がいた部屋
二部屋目で殺されている冒険者が最初に入った部屋が一部屋目を通り過ぎて二部屋目に入ったとは考えにくいので冒険者達は、一部屋目に入った冒険者と最初に二部屋目に入った2つのグループがいたに違いない。ということは、一部屋目も、この二部屋目からいける扉も共に最初に三階に上がってきた階段につながっている可能性が高いということだ。
扉を用心して開けるとまた暗闇の通路があり、少しその通路を歩くと一番最初に上がった階段に案の定着いた。
「はずれか・・・・」
あれだけの魔物を倒して元のところに戻っただけ。私は脱力感に包まれながら、一部屋目に入った部屋に戻った。そして、二つあったもう片方の開けてない左の扉をあけた。今度は通路だ。こっちが正ルートだろう。三階のマッピングをした後、元に固定した松明の火を消して回収して暗闇の通路を進んだ。
しばらく歩いていると、通路の先に急な坂があった。その坂はつるつるで吸盤でもないと上に登れなそうになかった。
「どうやって登るのかな」
坂の上にとっかりみたいのがあればそこにロープを投げて上に登ることもできるのだけれど坂の上は暗闇でいったいどこまで続いているかわからなかった。翼でもあれば上に登れるだろうが。う~ん。杭をうちこんでそこを足場としてさらに上に杭をうちこんでこれを続ければ上にあがれないこともない・・・かな?
その時以前カンダタと旅をしているときに雑談として隠し扉や隠し階段のことを話していることを思い出した。
何もない壁や床に隠し扉や隠し階段がある洞窟などがあるが、そういうときは、壁にかすかな隙間があったり、頻繁にその通路が使われる場合、その周りだけほこりが薄かったりなどすることがある。
そういうのを見つけることに秀でているのが盗賊という職業で物を盗むのだけが盗賊じゃないというようなことをカンダタが得意げに語っていた。
私は盗賊の技術は持っていないけれど数々の洞窟や塔を経験したことがあったのでなんとなく洞窟や塔が、どのような構造で作られているのかはわかる。
洞窟は自然によってできたものもあるから構造も一定ではないが、塔は人がつくったものがほとんどなので階段や扉の配置に結構法則があるものだ。
私は手袋をした手で壁を丹念に調べていった。最初はどこも何の変哲もない壁だと思ったが根気良く調べていくと、壁の1箇所にかすかだが、隙間があるところがあった。
私は非常食を刻んだり料理に使っている携帯用のナイフをとりだして、壁の隙間にナイフをいれて壁をほじくりだした。すると、ブロックの一部がはずれ、そこに取っ手がついた仕掛けらしきものがあった。
トラップが発動する可能性もあるので一瞬ためらったがしかしわざわざ壁にこんな仕掛けをしておいてトラップもないだろうと思って取ってをひいてみた。
すると、さっきまでツルツルだった坂道が砂煙と音をたてて階段にかわった。
「凝った仕掛けだこと・・・・・・」
私はその階段を上がっていった。
第336話 激戦区
前ページ:第334話 「止血と不安」に戻ります
目次に戻ります
ドラゴンクエスト 小説 パステル・ミディリンのTopに戻ります