【第344話】
六階への入り口
五階の魔物を全滅させた私。やるかやられるかの厳しい戦いだった。四百匹近くの魔物の息の根を止めた私はがくりとその場に膝をつく。
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・」
疲労が一気に襲いかかってきた。同時に体中の痛みも。戦いの時は集中していても疲労、傷の痛みを感じていた。しかしそれを意識してしまったら、二度と立ち上がれないため私は痛みを感じても耐え続けた。しかし一度気を抜くとあまりの痛さにうめき声が出る。
無事生き延びることができ、気が抜けてしまったため体中ががくがくとして立つことができなくなってしまった。筋肉が痙攣して、震えを抑えようとするが止まらない。ギガデインの余波も受けてボロボロの上、大量の汗をかき喉がカラカラだ。魔物の返り血も浴びて全身ベトベトしている。
私は柱を背もたれにして、寄りかかる。辺りはむせ返るような臭いの魔物の血と肉の焼けた死体の異臭で吐き気がするほどでとてもこの場にいるのは耐えられなかったが一度座ると動けなかった。それほど疲労していた。
体中も痛かったが魔法さえ唱える気力もなかった。それほどの疲労だった。同時に大量の魔物を殺してしまった罪悪感も感じた。
仕方ない、仕方ない・・・そう割り切って戦っても命を奪うというものは敵であってもつらいものだ。後には虚しさしか残らない。
そんな想いで数分、血生臭い床に座り込んでいたがずっとこの場にもいるわけにも行かず私は剣を杖にして起きあがった。
六階への階段はこの大部屋の一番端に見える。私は魔物の死体をよけながら自分で切り開いた六階への階段に向かった。
六階にもまだ生き残りの魔物がいるかもしれない。私は歩きながら意識を集中して残りの魔力でベホマを唱える。傷は癒えたが、二度のギガデインとライデイン、ベホマの使いすぎでもう魔力はないに等しい。
私は道具袋の中をのぞき込む。後、一個祈りの指輪が残っていた。残りの祈りの指輪を使おうか迷ったがこの塔の魔物は大方倒しただろう。それと大魔王の城でもきっと使うことも考えて六階も少し覗いて魔物がいるようであれば一度五階に戻り回復しようと思った。
もう少しこの場にいて体力を回復した後六階に行った方がいいとも思ったがこの塔は長居するとどんなトラップが作動するかわからない。先ほどのように外に放り出される凶悪トラップを恐れて私は六階の階段をゆっくりと上っていった。
六階は魔法の明かりがともされていて明るかった。かなり魔物達のおかげで、辺りは荒れていたが魔物もすべて五階に集まってきたようで六階は一匹も魔物と遭遇しなかった。
階段を上ってしばらく歩くと大広間に出た。その正面には、一つの石像がある。女性の石像だ。もしかして・・・・これがルビス様?
第345話 ルビスの像
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