【第345話】
ルビスの像
魔物との激戦を終えた私は疲れを押し殺して六階への階段を上っていった。部屋の真ん中には一つの石像が置かれている。この石像がルビス様なのだろうか。
私は石像の側に寄った。その石像は遠くからも女性だとはすぐわかったが側に行くと端整な顔立ちで優しげな方のようだ。しかしその表情はどこか悲しげであった。
竜の女王様からルビス様のことは聞いたことがあったけれど石化されたときは自分の力が及ばず悲しまれたのではないだろうか。今のアレフガルドを予知して悲しい顔をしている、そう私には見えた。
この方を救えば、アレフガルドは闇から光の世界に変わるのだろうか。
私はしばらくその石像の表情に見とれていたが、マイラの村長さんの話を思い出し、妖精の笛を取り出した。
元々この笛はルビス様が作られたもので強力な呪いを解くこともできると確か村長さんがおっしゃっていた。
この笛でルビス様の呪いが解ければいいのだが・・・私は笛を口にした。
しかし・・・・いったい何の曲をふけばいいのだろうか。楽器は子供の頃、アリアハンで少しやっていたことがあったので笛を吹くことはできるのだけれど・・・そうだ。うまく吹けるかわからないが、この曲にしよう。私は笛に息を吹き込んだ。
その曲はラダトームでこの塔に来る時、航海中にガライさんが竪琴で弾いていた曲だった。
精霊ルビス様をたたえる唄で、この国の者なら子供でも知っている有名な曲でアレフガルドの人には最も親しまれている曲だ。
私はその曲を一生懸命吹いた。そして、ルビス様の呪いが解けますように・・・・そう祈りながら笛を吹いた。
妖精の笛の魔力のおかげなのか初めて吹いた曲なのに、間違えもせず最後まで吹くことができた。そのきれいなメロディーがこの広間に響き渡る。
だが曲が終わり笛を口から話したが・・・・何もおきない。
「ダメなのかな・・・」
今度は別の曲を吹いてみようと笛に再度口をつける。
しかしその時に石像に一本のヒビが入った。そして・・・徐々に亀裂が入った。その亀裂から光が!
「あ・・・・あ・・・・・」
その亀裂は全身に広がり最後は石像全体を照らした。私は手で目の前を覆う。まぶしすぎで直視できなかった。
そして石像は光そのものになった。広間は光に包まれた。いったい、何が起きているの・・・・・私は手の隙間から光を見ようとしたがわずかな光を目で見ることもできず私は目をつぶった。
そして、優しく包み込むような女性の声が聞こえてきた。
「人の子よ・・・・・」
第346話 大地の精霊の復活
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