【第346話】
大地の精霊の復活
ルビス様の像を見つけて、私は妖精の笛を吹いた。アレフガルドで最も親しまれている曲だ。笛を吹き終わると石像がまばゆい光を放った。
「人の子よ・・・・・
よくぞ呪いを解いてくれました」
私は声を聞いて、目をあけようとした。光は収まっていなかったが、目を開けられないほどではなかった。しかし、石像であったものははっきりとその形がわからず光から声が発せられるように感じた。
「私は大地の精霊ルビスです。
あなたは・・・・・」
そう言ってルビス様は私を見て誰かを見定めようとした。視線は私の盾にうつった。勇者の盾には不死鳥ラーミアの紋章が刻まれておりそれを見たルビス様は微笑んだ。
「神に選ばれし者ですね」
「ルビス様・・・・」
やはりルビス様だったんだ。ルビス様を・・・・救うことができたんだ。
私は竜の女王様がおっしゃっていたルビス様をお救いすることができて竜の女王様との約束の一つを果たして満足感に包まれた。
「呪いを解いてもらい本当に感謝しています。
・・・・あなたの名は?」
「チェルト・・・・チェルト・フレイユと言います」
私は光に向かってそう答えた。ルビス様は光そのものだった。
「チェルト・・・
人の子でありながら、炎のような強き意志と勇気を持ち合わせた
誰よりも心強き者。
私はあなたの名を一生忘れません。
よくここまでたどり着きました。
私は大魔王の呪いによって今まで長い眠りについていました。
大魔王の力は天界を揺るがすもので
私の力の及ぶものではありませんでした」
「ルビス様・・・・ それではアレフガルドを作られたルビス様が復活されても まだアレフガルドは闇に包まれたまま・・・なのですか?」
これは私がずっと旅の間に心の中に思っていた疑問だった。
アレフガルドにいる人達はルビス様がアレフガルドの創造者ということやルビス様が封印されたことは知っている。それ故にこのアレフガルドは闇に包まれたのだと思っている人もいるようだがこれは大魔王の魔法・・・いや呪いの一種で闇に包まれているものだと私は思っていた。
大魔王の呪いを受けてルビス様が石化されたことでルビス様より大魔王の方が魔力・・・いや支配力とでも言うのだろうか、それがルビス様を上回っていることからルビス様が解放されても、この暗闇に包まれたアレフガルドは元に戻らないのではと思っていた。
「その通りです」
まるで私の心を見透かしたかのようにルビス様はお答えになった。
「大魔王の力は巨大で私の及ぶものではありません。
あなたが今持っている妖精の笛は呪いを解呪する力がありますが
アレフガルドに光を取り戻すことができるほど強い魔力は持っていません。
また私は大地の精霊であり、自然を司る精霊なので
命を生み出すことができても、戦うことはできないのです・・・」
神や精霊といえども万能ではない・・・・それは私達人間にとってショックなことではあった。
神を信じる信じないは人により自由だし神を信じるものは神を崇拝する。しかし、神は実在する。
実際に私達は魔法という力を、自分が用いる魔力と精霊や神の力をつかって発動することから神がこの世にいることは事実である。
人間で扱うにしては大きすぎる力は神や精霊の力を借りなければ発動できないものであり、呪文という言葉を発することにより、魔法を使うことができる。だが、神は人間だけに力を与えたわけではないし、魔物だって魔法を使うことができる。それは神や巨大な力を持つ精霊が複数いるからだろう。
人々は魔法が持つその巨大さに神を敬う。そして自分より力を持つ神は万能であると信じる。
だがそれは私達人間の勝手な思いこみであり、私達が神を頼りすぎていただけなのだろう。
神であれどできないことがある。
アレフガルドは未だ闇に包まれたままである。
ではどうするか。目的が変わるわけではない。
私はラダトームの人達を思いだした。メルキドの人達を思いだした。
巨大な力であっても団結して自分達の生きる場所を守ろうという人々の姿を。
私達は意志持つ人間だ。一人一人が持つ力が弱くても、強い意志を持てばそれは強い力となる。
自分達の世界は自分達で守らなければいけない。例えルビス様の力が及ばなくても私の目的は変わらない。
「竜の女王様は、私に光の心を与えて下さいました。 それは大魔王の闇の結界を払うものだと・・・ ルビス様が戦えなくても、人々が勇気を持って団結すれば振り払えると思っています。 そして私に与えられた力が役に立つのであれば 私が大魔王ゾーマを倒します。 そのためにアレフガルドにやってきました」
私は光に向かってそう答えた。
第347話 光の鎧
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