【第349話】
生き残った者
ルビス様を救った私は、光の鎧と聖なる守りをもらい受けた。一度ルーラでラダトームに帰還することにした。現状を報告するべきだと判断したからだ。
「おぉ…よくぞ戻ってきた!
そしてよくぞ、光の鎧を手に入れ、ルビス様の封印を解き放ってくれた!」
ラダトーム王は歓喜していた。
ラダトームに戻った私は、城門の兵士に自分の名前と事情を話し王に面会を頼んだ後、待合室で王の間に通されるのを待っていたのだが王自ら待合室に来た。
「きっと生きていると信じていたぞ。
船の沈没の話を聞いたときは絶望したものだったが」
「船が沈没したことをご存じなのですか?」
「あぁ、吟遊詩人ガライをはじめ、100人近くは
ラダトームに無事帰還することができた。
その者達から聞いた。
だが、お主は海の魔王の攻撃に巻き込まれたと聞かされたからの」
「そうだったのですか…」
海の魔王との戦いで船が沈没させられそうになったとき他のみんなはどうしたのか心配したのだけれど三隻のうち半分近くの人は助かったらしい。逆を言えば半分くらいの方は死んでしまったわけだ。
「残り三隻は別行動でルビスの塔に向かったはずですが 島についた時、船が無人でした」
私はルビスの塔に流れ着いて、ラダトームの軍船があったのを思い出し、彼らの中でラダトームに戻る者がいたのか尋ねた。
「残念ながら、もう一つの隊で帰った者はいなかった」
王は表情を崩した。
「そうですか…」
結局ルビスの塔の島に上陸したものは皆、塔で力尽きたのだ。血みどろになりながら、塔の最上階を目指した壮絶な戦いが思い出される。
「その者達の死を無駄にはできん。
我々は亡くなった者の気持を引き継いで
これからも生きていかなければならない」
「はい」
王と私は一瞬黙った。しかし、王が気を取り直して口を開いた。
「ではあるが、しかしお主が戻ってきたことは本当に良い知らせだ。
そして太陽の石の光を戻し、伝説の防具をすべて集め、ルビス様を救った。
こんなにめでたいことはない。
ラダトームも大きな戦があった後だから、贅沢はできんが、
ささやかな宴を催そう」
「申し出は嬉しいのですが、私はすぐに ルビス様から話がありましたアレフガルド遙か南の精霊の洞窟に 行こうと思っております」
「まてまて…」
王は私を止めた。
「はやる気持はわかる。
しかしだ、焦りはいい結果を生まん。
それに激戦の後では相当疲れもたまっているだろう。
せめて、一日だけでも休んで行くがよい」
私は少し考えた。体調は意外に良かった。魔法で回復はしたとはいえあれだけ傷だらけで立っているのがやっとであったのに。光の鎧をまとっているせいか、体の傷や痛みまで消してくれるようだった。水と食料は、海に落ちたせいで全部ダメになってしまったがすぐにそろえられる。だから準備を整えたら今すぐにでも出発しようと思ったのだがガライさん達が生きていてラダトームに帰還しているということははぐりんも一緒にもしかしているかもしれない。
私はそれを確かめるためにも、一日ラダトームに留まることを了承した。
第350話 行方しれずのはぐりん
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