【第352話】
精霊の祠
大魔王の城に渡るため、ルビス様のお言葉よりドムドーラを南下して毒の沼地を進み精霊の祠を目指した。
毒の沼地を抜けて、二泊野宿をした後さらに南に向かうと地図とほぼ同位置に精霊の祠らしきものが見つかった。ドムドーラから五日間はかかりそうなところを光の鎧のおかげで、睡眠以外はほぼ歩きっぱなしだったので二日ちょっとで着いてしまった。しかし驚いたことに精霊の祠の周りも毒の沼地で囲まれていた。
もしかして、この祠も邪悪なもので汚されたのかも?私はあせる気持ちをおさえ、祠の中に入った。
祠の中は外の沼地とはまったく別でとてもきれいで、精霊を象る像が何体かあった。
しかし祠の中は人や生き物の気配がしない。無人のようだった。ここにいったい、何があるの。ルビス様は何故、ここに行くようにとおっしゃったのだろう。
その時部屋の中央で小さな明かりが灯り光から声が聞こえきた。
「よくぞ、ルビス様をお助けくださいました」
光は少しずつ人の形を象り始めた。そこには一人の女性が立っていた。人間ではない。その証拠に耳がとんがっている。精霊の祠なのだからエルフなどに属す精霊族なのだろう。とても綺麗な方だった。人間の美人な女性とは別で美しい彫刻のような美しさと独特の気品があった。
「名はチェルト・フレイユと言います ルビス様に伺いここに来ました」
私はまず自分が名乗ることにした。
「私の名はルピーと言います。
アレフガルドに降り立った精霊の生き残りの一人です。
ルビス様を開放してくださりありがとうございます」
そう言うとルピーさんは頭を下げた。人間と同じ社交辞令が精霊族にもあるのかそれとも人間に合わせてくれたのかわからなかったがとても好意の持てる方だった。
「私はあなたをずっと見守っていました」
「ずっと?」
ルピーさんと名乗ったその物言いが気になり私は聞き返した。
「えぇ、あなたが魔王バラモスを倒す前からずっと」
「そんな前から」
バラモスを倒したのは遥か昔のような記憶でもあるしちょっと前にある記憶にも感じる。
「魔王がネクロゴンドを崩壊させようとしたときに
魔法の翼をお渡しもしました」
「あっ…では、はぐりんが言っていた キメラの翼を渡した女性というのは…」
私ははぐりんが出会ってまもないころ、ネクロゴンドを脱出するときに以前はぐりんが言った言葉を記憶の隅から取りだした。ルピーさんは笑顔で肯いた。
第353話 光の階段
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