【第380話】
違う時代の伝説の武具
防具屋の主人が私に手渡した木箱。その中には光の鎧と同様、綺麗な青い光沢をした兜が入っていた。
「この兜は…」
そう、ブルーメタルの兜だ。鉄や鋼の素材でてきているものではない。それは私にもわかる。
しかし伝説の武具として知られているのは王者の剣、光の鎧、勇者の盾の3つであり、兜については何も語られていない。その証拠にこの兜には不死鳥ラーミアの紋章もなかった。
「代々、我が家で守られている兜です。
竜騎士伝説というのはご存知で?」
「えぇ…少しは」
あれはメルキド大戦の前だった。竜騎士伝説の話を聞いた。
「かなり前の時代のことらしいけれど、人間と竜が共存していた時代があり 竜の心をつかみ、竜を操るものを竜騎士と呼びアレフガルドを守ってきた存在って聞いたわ」
「そうです。そしてこの防具は竜騎士の勇者が装備していた品と死んだ祖父に聞いています」
「そうなの!?」
こんなところで竜騎士伝説の話を聞くとは思わなかった。しかし竜騎士伝説はメルキドでも聞いた話だ。きっとアレフガルドの人にとっては結構有名な話なのだろう。伝説の武具を探していた時は、伝説の武具の情報を中心に集めていたためアレフガルドの歴史や付随することは基本のことしか知らなかった。私の勉強不足である。
「あなたが装備されている伝説の武器と防具のことはよく存じません。
たぶん時代がものすごく古いせいでしょう」
確かにラダトームでわかったのもつい最近でありラダトームの城の文献を見て初めてわかったようなことをラダトーム王は言っていた。ということは、竜騎士の伝説の方が人々が知っていることから時代は新しいのだろう。
「竜騎士は何代にもわたってこのアレフガルドを守ってきました。
竜騎士は雷の模様が入った鎧で身をつつみ、一太刀剣を降れば雷を召喚できるとも呼ばれていました。
雷の騎士とも別名で呼ばれていてそしてドラゴンをも操ることからその存在は無敵とされていたのです」
「雷の模様が入っていた鎧に雷が召喚できる剣… もしかして…雷神の剣に、雷神の鎧?」
「さぁ…呼び名はわかりませんが…」
もしかしてそうであれば、カンダタが持っていた雷神の剣やルビスの塔で壊れててしまったがラダトームの国宝で私が譲り受けた雷神の鎧は竜騎士の遺産ということになるのではないか。
ただ色が黒い雷神の鎧にこの青い兜という組み合わせは色的にミスマッチではないかと、場違いなことを考えてしまった。素材が違うから仕方ないだろうけれど…その時代は青か黒に全身統一して塗られていたのだろうか。いや、今はそんなことはどうでもよい。
それと盾のことについては竜騎士伝説でふれていないがもしかしたら雷神の盾というのも存在するのかもしれない。勇者の盾を持っている以上、盾は存在しても私には不要なものだがこの兜の存在はこれからの戦いにおいて欲しいものだった。
「うちはこのアレフガルドの中でも、最も古い防具屋です。
だから店の品物も、よかったでしょう?
代々防具屋のため、ここでほとんどの防具はそろいますから。
そんなときにどこからか、ご先祖様がこの鎧を手に入れたのでしょうね。
そしてご先祖様が鎧を我が家に持って帰ったとき、天からそのような予言があったと聞いています。
この兜と同じ鎧をまとったものが現れたとき、その方にこれを渡す
それが私の家で代々この兜と言い伝えです。
あまりに良い兜なので、一時期は売ろうとも考えたんですけれどね。
でもこの暗黒の時代、いくら大儲けをしたからといって、生活が豊かになるわけでもないし
言い伝えを守って、倉庫の中に置いておきました。
まさか、本当にブルーメタルの鎧を着た方が現れるとは思いませんでしたが…
メルキドを救い、ルビス様のご加護をうけた方というのであれば、あなたがそうなのでしょう。
これはあなたのものです。お持ちください」
第381話 命の指輪
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